研究課題/領域番号 |
19H02772
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
大山 俊幸 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (30313472)
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研究分担者 |
所 雄一郎 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 応用科学群, 助教 (80709692)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 熱硬化性樹脂 / 相互侵入高分子網目構造 / IPN |
研究実績の概要 |
本研究では、「ネットワークの形成後に切断できる共有結合」を有するモノマーを介して2種類のネットワークが強制的に一体化したネットワークポリマーを形成したのちに、ネットワーク間の共有結合を切断することにより、2つのネットワークが分子鎖レベルで絡み合った高架橋度の相互侵入高分子網目(IPN)および半相互侵入高分子網目(semi-IPN)構造を構築することを目指している。今年度は「エポキシ基,ラジカル重合性基,三級エステル構造を兼ね備えたアクリレート型モノマー」と通常のアクリレートモノマーとのラジカル共重合により得られる「アクリレート型コポリマー」を組み込んだネットワークポリマーの合成、およびネットワーク間の共有結合の切断によるsemi-IPN構造の形成について検討を行った。 最初に、アクリレート型コポリマー存在下でエポキシ樹脂の硬化反応を行うことにより、ポリアクリレートとエポキシ樹脂が一体化したネットワークポリマーを形成した。その後、より高温での加熱を行いコポリマー中の三級エステル部位を切断することにより、エポキシネットワークとポリアクリレートとのsemi-IPN構造の形成が期待される硬化物を作製した。この硬化物の機械特性について、通常のポリアクリレートホモポリマー存在下で硬化させたエポキシ樹脂硬化物の機械特性と比較したところ、強度・弾性率・破壊靭性値のすべてにおいて向上していることが確認された。また、三級エステル構造を省いたアクリレート型コポリマーの存在下で硬化した硬化物と比較した場合も同等の強度と弾性率を保ちつつ破壊靭性値が向上した。これらの結果は、本研究で設計・合成したアクリレート型コポリマーの使用によりsemi-IPN構造が形成されていること、およびsemi-IPN構造の形成が機械特性の向上に有効であることを示唆していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究において新たに設計した「二種類の重合性基(エポキシ基,ラジカル重合性基)」と「加熱により切断が可能な三級エステル構造」を兼ね備えたモノマーを用いて作製した硬化物が、このモノマーを含まない硬化物よりも優れた機械特性を有していることを明らかにすることができた。この結果は、本研究の手法によりsemi-IPN構造が実際に形成されていること、およびsemi-IPN構造の形成により高架橋度ネットワークポリマーの機械特性が向上することを示唆しており、他の熱硬化性樹脂系への展開が期待できるものである。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果をもとに、一般的なエポキシ樹脂などよりも高い耐熱性が期待され、かつ硬化後の構造に極性基(OH基など)を含まないシアナート樹脂などを熱硬化性樹脂として用いた検討を行い、高耐熱かつ強靭なネットワークポリマーの創出を目指す。シアナート樹脂の硬化においては、エポキシ樹脂などよりも高温までの加熱が必要となるため、「ネットワークの形成後に切断できる共有結合」についても、より高温での切断に対応した分子設計が求められる。よって、「1. シアナート樹脂に組み込まれる官能基」「2. ビニルポリマーに組み込まれる官能基」「3.三級エステル構造よりも高温で切断できる官能基」を一つの分子内に兼ね備えたモノマーを新たに設計・合成し、このモノマーを用いて硬化物の作製を行うことにより、シアナート樹脂ネットワークとビニルポリマーが分子鎖レベルで絡み合ったsemi-IPN構造およびIPN構造を形成する。
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