研究実績の概要 |
非絡み合い鎖に対する標準モデルである Rouse モデルに対して、局所摩擦 z, バネ強度 k, および 熱揺動力の強度 B が流動によって変化することを考慮して運動方程式を精密解析した。この解析においては、Rouse 鎖が主鎖骨格に平行な A 型双極子を持つと考え、また、 z と B がテンソル型の異方性を示す可能性があることを考慮して、鎖の末端間ベクトルのダイナミクスを反映する誘電損失 e" を z, k, および B を用いて一般的かつ解析的に表現することに成功した。その結果、流動の渦度方向の e" の緩和モード分布は流動に一切影響されないが、速度勾配方向の e" の緩和モード分布は z の off-diagonal 成分が大きければ流動によって広幅化することや、いずれの方向についても e" の緩和強度は k の非線形性に支配されることなど、特徴的挙動が明らかとなった。また、流動下の拡散挙動についても解析を行い、各方向の拡散係数がテンソル型の B の非線形性に支配されることなどを明らかにした。さらに、粘度や第一法線応力差係数というレオロジー量についても、k およびテンソル型の z, B を用いた解析的表現の導出に成功した。 上記の結果は、非絡み合い A 型鎖(例えば低分子量のポリイソプレン)に対する流動誘電緩和データと流動拡散データから z, k, および B の非線型性を実験的に決定できること、この非線形性はレオロジーデータを用いて検証できることを意味する。この検証は本研究の発展として R4年以降に行う予定であるが、現在、流動誘電緩和測定に必要なジグ(コーン・プレート型電極)を作成中である。
|