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2019 年度 実績報告書

カテコール構造を含む剛柔構造シロキサンポリマーからなる高性能接着剤の開発

研究課題

研究課題/領域番号 19H02781
研究機関鹿児島大学

研究代表者

金子 芳郎  鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (80404474)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードポリシルセスキオキサン / ポリシロキサン / 接着剤 / カテコール / ハイブリッド
研究実績の概要

2019年度は、高い割合でカテコール成分が側鎖に導入されたラダー状ポリシルセスキオキサン(PSQ)および直鎖状ポリシロキサン(PS)の創製と接着特性について検討した。
まず、当研究室で既に開発されたアンモニウム側鎖基含有ラダー状PSQ(PSQ-Am)および直鎖状PS(PS-Am)と1,1’-カルボニルジイミダゾールをトリエチルアミン存在下、脱水DMSO中で反応させることにより、カルボニルイミダゾール基含有シロキサンポリマー(PSQ-CImおよびPS-CIm)を合成した。次に、PSQ-CImおよびPS-CImとアミノ基を有するカテコール誘導体(ドーパミン塩酸塩)をトリエチルアミン存在下、脱水DMF中で反応させることにより、カテコール成分がウレア結合を介して導入されたシロキサンポリマー(PSQ-U-Ph(OH)2およびPS-U-Ph(OH)2)を合成した。カテコール成分の導入率は約60-75%であった。
これらのポリマー溶液を用いてアルミニウム板を接着させ(接着面積:125 mm2)、室温での引張せん断試験を行ったところ、どちらのポリマーにおいても強力な接着性を示した(剥離したときの応力:約3.9-5.6 N/mm2)。また、接着させたアルミニウム板に5 kgの重りを吊り下げ、オーブンで加熱したところ、PS-U-Ph(OH)2で接着させた基板では120℃まで加熱すると剥離したのに対し、PSQ-U-Ph(OH)2で接着させた基板では200℃に加熱しても重りは落下せず、接着性を維持していた。DSC測定より、PSQ-U-Ph(OH)2では200℃以下にTgが観測されないことがわかった。すなわち、PSQ-U-Ph(OH)2は200℃以下では軟化せず、このことからPSQ-U-Ph(OH)2で接着されたアルミニウム板は200℃のような高温下でも接着性を維持できたと考えている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の計画で予定していたアンモニウム基含有水溶性ラダー状PSQ(PSQ-Am)および直鎖状PS (PS-Am)側鎖への、カルボキシル基含有カテコール誘導体の縮合剤を用いた導入反応を検討したが、カテコール成分の導入率が20-30%程度までしか上がらず、マルチマテリアル化で利用が期待されているアルミニウムに対する良好な接着性が得られなかった。
そこでカテコール成分の他の導入方法として、PSQ-AmおよびPS-Amに対して、アミノ基を有するカテコール誘導体(ドーパミン)の1,1'-カルボニルジイミダゾールを用いた導入反応を検討した。その結果、尿素結合を介して比較的高い割合(70%以上)でカテコール成分が導入されたラダー状PSQ(PSQ-U-Ph(OH)2)および直鎖状PS(PS-U-Ph(OH)2)が得られ、これらのシロキサンポリマーがアルミニウム板に対して非常に強力な接着性を示すことを明らかにした。さらに、PSQ-U-Ph(OH)2は200℃のような高温下でも接着性を維持できることがわかった。以上のように初年度の目標をある程度達成することができた。

今後の研究の推進方策

2020年度は、衝撃に対する接着性の向上や熱膨張係数の異なる異種材料の接着を可能にするためのシロキサンポリマー接着剤として、剛直構造のPSQ-U-Ph(OH)2と柔軟構造のPS-U-Ph(OH)2の混合物による接着性の評価を行う。さらに剛直性と柔軟性のバランスの取れたシロキサンポリマーとして、PSQ-U-Ph(OH)2とPS-U-Ph(OH)2の両方の繰り返しユニットをもつ共重合体を合成し、接着性の評価を行う。また、接着剤自体の力学強度を向上させるために、接着過程でシロキサンポリマー同士が架橋するような官能基も導入する。一方で、被着体はアルミニウムに加えて樹脂も用いて検討する。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2019

すべて 学会発表 (10件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)

  • [学会発表] POSS連結型ポリマーへのカテコール成分の導入と接着特性2019

    • 著者名/発表者名
      大城章瑚、金子芳郎
    • 学会等名
      ナノ学会第17回大会
  • [学会発表] カテコール成分含有POSS連結型ポリマーの合成と接着特性2019

    • 著者名/発表者名
      大城章瑚、金子芳郎
    • 学会等名
      第56回化学関連支部合同九州大会
  • [学会発表] Preparation of POSS-linking polymers containing catechol component and their adhesive properties2019

    • 著者名/発表者名
      Shogo Oshiro and Yoshiro Kaneko
    • 学会等名
      XX International Sol-Gel Conference
    • 国際学会
  • [学会発表] 構造制御されたイオン性シルセスキオキサンの合成および機能材料へ応用2019

    • 著者名/発表者名
      金子芳郎
    • 学会等名
      第9回九州若手セラミックフォーラム(KYCF-9)
    • 招待講演
  • [学会発表] Preparation and adhesive properties of a POSS-linking polymer containing catechol component in side chains2019

    • 著者名/発表者名
      Shogo Oshiro and Yoshiro Kaneko
    • 学会等名
      Taiwan-Japan Bilateral Workshop 2019 (2019 TJBW)
    • 国際学会
  • [学会発表] カテコール構造を持つPOSS連結型ポリマーの創製と接着特性2019

    • 著者名/発表者名
      大城章瑚、金子芳郎
    • 学会等名
      第68回高分子討論会
  • [学会発表] Preparation of a POSS-linking polymer containing catechol component and evaluation of adhesive properties2019

    • 著者名/発表者名
      Shogo Oshiro and Yoshiro Kaneko
    • 学会等名
      5th NDSU-KU Joint Symposium on Biotechnology, Nanomaterials and Polymers
    • 国際学会
  • [学会発表] カテコール基を側鎖に有するPOSS連結型ポリマーの合成と接着特性2019

    • 著者名/発表者名
      大城章瑚、金子芳郎
    • 学会等名
      第23回ケイ素化学協会シンポジウム
  • [学会発表] カテコール構造含有POSS連結型ポリマーの創製と接着特性の評価2019

    • 著者名/発表者名
      大城章瑚、金子芳郎
    • 学会等名
      九州地区高分子若手研究会・冬の講演会
  • [学会発表] イオン性シルセスキオキサン:合成、構造制御、機能化およびハイブリッド化2019

    • 著者名/発表者名
      金子芳郎
    • 学会等名
      第170回東海高分子研究会講演会
    • 招待講演

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公開日: 2021-01-27  

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