研究課題/領域番号 |
19H02782
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研究機関 | 豊田工業大学 |
研究代表者 |
田代 孝二 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任教授 (60171691)
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研究分担者 |
Mengfan WANG 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), ポストドクトラル研究員 (30817862)
山元 博子 公益財団法人科学技術交流財団(あいちシンクロトロン光センター、知の拠点重点研究プロジェクト統括部), あいちシンクロトロン光センター, 技術研究員 (10423592)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 高電場 / ポリフッ化ビニリデン / 絶縁破壊 / 広角X線回折 / 小角X線散乱 / 赤外分光 / 階層構造変化 |
研究実績の概要 |
高分子材料は電気絶縁体としても大量に使用されているが、常に問題となるのが絶縁破壊現象である。高分子物質は複雑な階層構造を持った組織体であり、外部電場が構造に与える効果ならびに絶縁破壊の機構解明には夫々の階層レベルでの構造変化を明らかにし、それらの間の相関を解明することが不可欠である。本研究では、高分子フィルムに高電圧を逐次印加し、その過程で生じる階層構造変化について広角・小角X線散乱および赤外スペクトルの同時高速時間分解測定を行うこととした。主として対象としたのはフッ素系高分子であり、圧電センサーや誘電材料として自動車産業などでも極めて重要な位置づけにある。 初年度は、高電圧印加下でのX線散乱および赤外分光同時測定を、強力な放射光X線を用いて秒オーダーの時間間隔で行い、これまで予備的に行ってきた実験結果を確定するとともに、得られたデータを様々の観点から解析し、高電場印加で生じる構造変化を定量的に抽出することとした。しかしながら、実験はこれまでに我々が経験したことのないほどに困難なものであり、再現性の高いデータを得るには様々の問題をクリアーせねばならないことが分かってきた。例えば、当初想定した以上に高い頻度でフィルムの絶縁破壊が起こった。アースの取り方など、様々の工夫を行っているが、未だに完全な解決策を見出していない。フィルムの構造不均一性も問題である。強力な放射光照射による試料ダメージを避けるべくX線照射場所をシフトさせつつ各電圧におけるX線散乱データを集めることにしたが、フィルム全般にわたる構造不均一がデータの定量解析に大きな支障となった。現在、これらの問題点の解決策を探っている。赤外スペクトルについては、秒刻みのX線時間分解測定ほどの速度での測定は出来ないが、時間の対応関係を精確に見極めつつデータの解析を行っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上述したように、実験の実施においては、当初に予想した以上に様々の重大な問題が出てきた。頻繁に起こる絶縁破壊、強力な放射光X線照射によるダメージなどである。印加電圧の範囲を変える、その速度を変える、X線露光時間を変えるなど、様々の工夫を行っているところである。また、絶縁破壊時に検出器が奇妙な挙動をすることも、重大な問題の一つであり、測定システムのアース設定法、検出器と高電圧電源との位置関係など、様々の検討を行っているところである。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように様々の難題が伴う実験ではあるが、本研究は、高分子、外部電場、階層構造変化、絶縁破壊と、高分子科学にとって、また高分子工業にとっても極めて重要な課題であると位置付けている。現在、システムの電気回路の再考、アースの取り方の変更、試料フィルムの均一性の改良、X線散乱データの処理方法など、様々の問題を一つずつ解決しながら、新しい、かつ再現性の高いデータの集積を目指しているところである。
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