研究課題
高分子は電気絶縁材料など電気との関わりも非常に強い。その代表であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)は圧電センサー、コンデンサーなど様々の形で利用されている。電圧印加下での使用に際して、高分子材料中で如何なる構造変化が起こっているのか、「その場」での観察が、今後の材料展開上にも不可欠である。大抵は電場印加「後」の試料について顕微鏡観察など「バルク」な研究に限られており、「その場観察」研究例は殆ど皆無である。我々は、PVDFフィルムへの高電場印加時に生じる階層構造変化を放射光X線散乱ならびに赤外振動スペクトルの同時高速時間分解測定に基づいて追跡し、構造―電気物性相関解明を目指した。本研究の前半では、市販の二軸配向PVDFフィルムを用いた実験を行い、電場方向への双極子配向と同時に分子鎖軸の傾斜運動が協奏的に起こることを見出すとともに、その誘因として、電場印加に伴う分子鎖ねじれ運動と構造欠陥発生の機構が重要であることを量子力学計算に基づき提案した。それらの成果は高分子分野でトップの国際誌に発表した。しかし、用いた試料が複雑な内部構造を有する二軸延伸フィルムであったため、データ解析は困難で様々の不明な点が残されていた。研究後半では、より分かり易いX線回折パターンを有する一軸配向PVDFフィルムを作製し、放射光実験を行った。双極子反転と分子鎖の傾斜運動に加え、高電場下で結晶相転移が起こっていることを初めて見出した。また絶縁破壊現象と構造変化との関わりについて高電場下での超高速カメラ撮像と高時間分解X線回折との同時測定を実施し、ミリ秒オーダーで発生する絶縁破壊現象を追跡した。高電場下での高分子内部構造変化の「その場」観察は世界的に見ても本研究以外に殆ど見られない極めてオリジナリティーに富んだ成果であり、この分野の発展に大きな貢献が出来たと自負している。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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