研究課題/領域番号 |
19H02783
|
研究機関 | 鶴岡工業高等専門学校 |
研究代表者 |
森永 隆志 鶴岡工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (30467435)
|
研究分担者 |
伊藤 滋啓 鶴岡工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (20707806)
佐藤 涼 鶴岡工業高等専門学校, その他部局等, 特命准教授 (20757166)
正村 亮 鶴岡工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (50757599)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | イオン液体 / 制御ラジカル重合 / ポリマー電解質 |
研究実績の概要 |
本研究では、イオン液体型アニオンポリマー材料におけるイオン伝導メカニズムの解明を目指すとともに、イオン液体を用いた電気化学デバイスが実用的な性能を発揮するために、その独特の発電メカニズムに適合する電池材料の開発を行う。具体的には、イオン液体型アニオンポリマーを用いた電池材料の創製を実現するため、①高イオン伝導性発現メカニズムの解明、②イオン液体モノマーの分子設計及びポリマー構造の制御によるイオン伝導性の更なる向上、③次世代電気化学デバイスの問題解決に資する電池材料の開発を目標として研究開発を行っている。 昨年度は、リチウムイオン遊離型のイオン液体型アニオンモノマーの制御ラジカル重合(CRP)について検討し、構造の明確なアニオン性イオン液体型ポリマーを試みた。具体的には、メタクリレート型のモノマーにトリフルオロメタンスルフォニルイミドを担持したリチウム塩型モノマーを用いて、遷移金属錯体を用いたCRPの一種である原子移動ラジカル重合(ARTP)を行った。重合はリビング的に進行し、数平均分子量が7300、分子量分布指数が1.3のポリマーを得るに至った。また、得られたポリマーのガラス転移温度は常温域には発現せず、これまでに報告しているイオン液体型ポリマーの性状とは異なる傾向を示した。さらに、溶液中におけるアニオン性ポリマーと対カチオンの拡散係数を比較したところ、対カチオンが10倍以上速く移動していることが明らかとなり、本研究における仮説の一つである遊離カチオンの存在を示唆する実験結果を得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
イオン液体型モノマーの合成は、当初の計画通りに進んでおり、ラジカル重合によるアニオン性イオン液体型ポリマーの合成と、制御ラジカル重合による分子量分布の狭い、構造の制御されたポリマーを合成することにも成功している。更に、PEFC用の電池材料として優れた性能を有することが報告されているMTDBカチオンを遊離カチオンとするアニオン性イオン液体型モノマーの合成にも成功しており、新しい視点からの電極における界面設計指針も見出されつつある。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は、遊離カチオンの電解質中における機能を確認するために、ゲル電解質中におけるイオン伝導性と遊離イオンの拡散係数の測定を行う予定である。対照試料として、従来の四級アンモニウム塩型(カチオン性)イオン液体型ポリマーを用いたゲル電解質と比較し、その効果の検証を行う。また、遊離カチオンの機能性を向上させることを目的として、微粒子表面に濃厚ポリマーブラシ構造のアニオン性イオン液体型ポリマーを導入し、微粒子積層型固体電解質の創製も試みる。本研究室において既に、四級アンモニウム塩型のイオン液体型ポリマーを用いた微粒子積層型固体電解質中におけるLiイオンの拡散係数の向上が確認されており、本系においても同様の効果が期待されるものである。これらの知見を合わせることで、アニオン性イオン液体型ポリマーの性能を最大限に発揮可能な電解質設計を見出す。 遊離カチオンの構造設計に関しては、リチウムイオン電池(LiB)用電解質への応用を視野に入れ、リチウムイオンにテトラグライムが配位したLi-G4錯体を担持するアニオン性イオン液体型ポリマーの合成を行う。さらに、固体高分子形燃料電池(PEFC)への用途を推進するべく、MTDBカチオンを遊離イオンとして担持したアニオン性イオン液体型ポリマーを用いた電池材料の開発にも着手する。これらの新規遊離カチオン設計は、全固体型LiBならびに中高温無加湿駆動PEFCのような、次世代型の電池設計の実現に資するものである。
|