研究課題/領域番号 |
19H02784
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
関 朋宏 静岡大学, 理学部, 講師 (50638187)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 相転移 / メカノクロミズム / 発光 / 結晶 / 金錯体 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、従来とは異なる高付加価値の機能を有するメカノ応答性および光応答性の金錯体結晶材料を体系的に開発することである。これまでの研究では、芳香族金イソシアニド錯体の誘導体が、前例のない多様なメカノクロミック特性を示すことを見出している。この優れた分子骨格を用い、本研究では、発光性メカノクロミズムに加え、光応答性材料を含めた新規かつ革新的な刺激応答性材料群を体系的に開発することを目指す。 当該年度には、屈曲可能な金錯体結晶の開発に成功した。一般に分子結晶は固くて脆いため、過度に力を加える結晶が損壊し破断し壊れてしまう。一方一部の分子結晶は力を加えることで壊れることなく折れ曲がることが知られている。今回、我々は開発したN-ヘテロ環状カルベン金錯体の結晶は力を加えると変形する。一方、加えていた力を除いても変形形状を維持しているが、逆方向から力を加えると元の直線的な結晶がリカバーした。既存の可変形結晶とは異なり、変形角度が約45度で一定であることも明らかにした。この再現性のある変形角度を示した要因を調査するため単結晶X線構造解析を行った。その結果、変形ドメインと非変形ドメインの結晶構造情報より、これらの界面での分子レベルの配列を実測することができ、そこから導き出されるマクロな結晶の変形角度が約45度になることを明らかにした。すなわち、ミクロな構造情報よりマクロな結晶の変形性が説明できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
N-ヘテロ環状カルベン金錯体に関して調査を進め、変形可能な結晶群の体系的な開発に成功している。その成果の一部は、Angew. Chem. Int. Ed. 2020, 59, 8839に報告したが、当該年度にこの他にも数多くの変形可能分子結晶の開発に成功している。特に、既存の変形可能結晶では発光性を伴う例や、屈曲に伴う相転移を示す例が極めて少ないが、当該年度で得られた実験結果ではこれらを併せ持つ成果を数多く開発し、研究報告の準備を進めている。単結晶に特有の精緻な分子配列の形成と、相転移による厳密な配列変化の結果として、これまでにない刺激応答性材料の開発が可能となることがわかりつつある。これらの成果が得られたことから、研究は順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
N-ヘテロ環状カルベン金錯体分子を体系的に合成し、その分子結晶を作成し刺激応答性を評価する事によって、当該年度に多様な変形特性をやクロミック特性を明らかにしてきた。これらの結果を踏まえて次年度はそれらの成果の報告と、更に同様のN-ヘテロ環状カルベン金錯体分子の誘導体からなる結晶を評価していく。イソシアニド金錯体から配位子をカルベンに変更することで、このような成果が得られた点を考え、今後はその他の金属を含むイソシアニドやN-ヘテロ環状カルベン錯体を合成し、それらの結晶の刺激応答性も合わせて評価する予定である。
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