研究課題/領域番号 |
19H02785
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
笠井 均 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (30312680)
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研究分担者 |
小関 良卓 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (80780634)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ドラッグデリバリーシステム / 再沈法 / 表面修飾 / 抗がん剤 / ナノ薬剤 |
研究実績の概要 |
従来の創薬の設計では薬化合物に水溶性置換基を付けることが一般的であったが、体全身に薬剤が回ってしまい、抗がん剤のような強度の強い薬剤の場合、副作用が避けられなかった。そこで、粒径200 nm以下に制御されたポリマー粒子などに抗がん剤を担持させるドラッグデリバリーシステム(DDS)に注目が集まった。しかしながら、ナノ薬剤中の薬化合物が占有する比率が10 wt%以下であり、しかもキャリアとして使用しているポリマー自体が副作用を引き起こすことが課題として指摘されている。研究代表者らは、抗がん活性を持つ化合物だけで作られたナノ薬剤の作製に既に成功しているが、動物実験における薬剤輸送効率に改善の余地があることが判明した。そこで、本研究では、ナノ薬剤の表面にポリマーなどを薄く被膜するという表面修飾技術を確立し、血中薬剤滞留性を向上させることにより、腫瘍組織にナノ薬剤を効率的に輸送することを目的とした。 本年度は、SN-38コラン酸誘導体のナノ薬剤を用いて、血清アルブミンによる表面修飾を実施した。血清アルブミンは血中に最も多く存在するタンパク質であり、高い血中滞留性を持つことが知られている。本研究では、血清アルブミンによるSN-38誘導体ナノ薬剤の表面修飾を行い、血中滞留性の向上を図った。結果として、SN-38コレステロール誘導体の薬剤ナノ粒子に血清アルブミンを静電相互作用により吸着させることで、PBS中において1週間以上の良好な分散性を示すことが明らかとなった。また、細胞実験評価により、薬剤ナノ粒子が凝集を起こしている場合と比較して、今回作製に成功した分散安定性の高い薬剤ナノ粒子の方が高い細胞増殖抑制活性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
血清アルブミンにより薬剤ナノ粒子の表面修飾を施した系により、到達目標としていたナノ薬剤の表面修飾、細胞実験による評価まで検討を進め、良好な結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
血清アルブミンにより薬剤ナノ粒子の表面修飾を施した系に関して、担がんマウスを用いて抗腫瘍効果を検証する。また、血清アルブミン以外の表面修飾剤に関しても検討を進める。
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