研究課題
本研究では、有機半導体高分子を用いて電子移動度10 cm2 V-1 s-1を超えるトランジスタ特性を実現することを目標としている。ベンゾビスチアジアゾール(BBT)や窒素が置換したBBT誘導体であるチアジアゾロベンゾトリアゾール(SN)を基本骨格として、ナフタレンジイミド(NDI)や縮環オリゴフェニレンビニレン(OPV)誘導体と共重合することで平面性が高い共役主鎖骨格の構造を決定した。さらに、側鎖アルキル基を調節することで高分子鎖の基板上での配向を制御することに成功した。さらなる高分子量化と溶解性の向上を目指し、多分岐アルキル鎖の合成を試み、SNやNDIなどのsp3窒素に置換する方法論を試験した。長鎖アルキル鎖や分岐度が高いアルキル鎖を置換した方が一般的に共役高分子の有機溶媒への溶解性は向上した。また、新たな電子不足系共役スペーサー(および共モノマー)としてオキサゾールの誘導体化も調査した。ブチルリチウムで処理後、トリブチルスズクロリドを反応させると選択的に5-置換オキサゾールが得られ、Stilleカップリングでモノマー骨格を拡張できた。オキサゾール2位のC-H結合は活性が高く、直接アリール化重縮合により対応する共役高分子を合成することができた。オキサゾール含有高分子の最低空軌道(LUMO)準位は-3.8eVと十分に深く、新たな電子輸送性高分子として機能すると考えられる。薄膜トランジスタの評価において少量添加物によるドーピングの効果についても検証した。トリブチルアンモニウム塩などを加えるとp型またはアンバイポーラ型共役高分子の結晶性が向上し、トランジスタにおける移動度が改善する場合があることが分かった。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していた実験を完了していることと、予備的な実験で新しい結果も得られているため、おおむね順調に進展していると判断した。
新たに合成した電子輸送性高分子のトランジスタ特性を評価すると共に、ドーピングの効果が電子輸送性高分子の電子移動度向上にも寄与するかを検証する。また、近年、環境問題に配慮したプラスチック材料の設計が求められているため、アゾール環の分解性も調査する。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 5件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 5件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
Macromol. Chem. Phys.
巻: 223 ページ: 2100370
10.1002/macp.202100370
Chem. Mater.
巻: 34 ページ: 3140-3151
10.1021/acs.chemmater.1c04258
J. Mater. Chem. C
巻: 10 ページ: 346-359
10.1039/D1TC04948H
Macromolecules
巻: 54 ページ: 4351-4362
10.1021/acs.macromol.1c00008
J. Phys. Chem. C
巻: 125 ページ: 27479-27488
10.1021/acs.jpcc.1c08929
http://www.op.titech.ac.jp/lab/michinobu/jp/index.html