研究課題/領域番号 |
19H02787
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山田 泰之 名古屋大学, 物質科学国際研究センター, 准教授 (10385552)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ポルフィリン / フタロシアニン / ロタキサン / 分子認識 / 分子リフト |
研究実績の概要 |
本年度は研究初年度であり、本研究の目指す(i)分子ジッパー型、(ii)分子リフト型の分子機械のデザインと合成をおこなった。 アルキルアンモニウム鎖で4重に架橋されたポルフィリンのface-to-face二量体に対して、4つのクラウンエーテルを持つフタロシアニンが4重にインターロックした多重インターロック型face-to-faceヘテロ3量体は、中央のフタロシアニン環と両端のポルフィリン環との間に2つのナノ空間を持つ分子組織である。この分子組織を用いて、「分子を持ち上げることができる分子リフトを構築する」という目標を設定した。本年度は、この多重インターロック型ヘテロ3量体のナノ空間への分子包接能についての評価をおこなうこと共に、この分子組織を金基板表面に接合するためのジスルフィド基を修飾した多重インターロック型ヘテロ3量体の合成に取り組んだ。ジスルフィド基修飾多重インターロック型ヘテロ3量体は合成中であるが、分子認識能を検討する過程で、多重インターロック型ヘテロ3量体の極めてユニークな構造変化を見出した。多重インターロック型ヘテロ3量体はCHCl3中とCH2Cl2中とで全く異なるUV-Vis吸収スペクトルを与えることが分かった。NMR測定の結果と合わせて詳細に検討した結果、CHCl3中において多重インターロック型ヘテロ3量体はCHCl3をナノ空間内に取り込むことにより、ポルフィリンーフタロシアニン間距離が広がった「伸長型」構造をとるが、CH2Cl2中ではポルフィリンーフタロシアニンがスタッキングした「収縮型」構造をとること示唆された。この「伸長型」と「収縮型」の変化は、本研究で目指す分子リフトの構造変化そのものである。 また分子リフト同様、分子ジッパーの骨格となる4重ロタキサン型ポルフィリン・フタロシアニンface-to-face型分子組織の合成についても合成を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、外部刺激により大きく構造変化する分子機械を利用して、メゾーマクロスコピックサイズの構造体のダイナミックな集合構造変化および方向選択的運動の制御を行う分子システムを構築することである。 具体的には、我々がこれまでに合成してきた「分子筋肉・分子エレベータとして機能しうるロタキサン型ポルフィリン・フタロシアニンface-to-face分子組織」の構造変化の特徴を最大限に活用することにより、 (i)分子集合体の会合・離散を自在に制御できる分子ジッパーの開発および (ii)粒子を「持ち上げる」等の「仕事」をすることができる分子リフトの開発することが具体的な検討項目である。 本年度は、研究の初年度ということで、(i), (ii)に必要な分子組織のデザインと合成をおこない、順調に合成を進めている。また「研究実績の概要」で説明したように、(ii)の分子リフトの合成において、本研究で目標とする「分子機械の伸長・収縮を、分子機械のゲスト分子認識挙動を利用してダイナミックに制御する」ことに繋がる重要な知見を得た。このため、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後も2019年度に引き続いて、(i)分子集合体の会合・離散を自在に制御できる分子ジッパー、および (ii)粒子を「持ち上げる」ことができる分子リフト、の両者それぞれの基本骨格となる分子組織の合成を進める。具体的には、(i)の研究課題については、リン酸アミド型ストッパーを導入した新規な4重ロタキサン型ポルフィリン・フタロシアニンface-to-face会合体の合成を進めるとともに、その分子組織を、分子ジッパーの構成要素である「分子レール」と「会合―離散をコントロールする標的分子」と連結する反応をおこなう。(ii)の研究課題については、2019年度に明らかになった、多重インターロック型ポルフィリン・フタロシアニンface-to-faceヘテロ3量体の「伸長」「収縮」を伴うダイナミックなCHCl3分子包接挙動について単結晶X線構造解析等による詳細な解析をおこなうとともに、他のゲスト分子の包接挙動について探索を進める。さらに、金表面と接合可能なジスルフィド修飾多重インターロック型ポルフィリン・フタロシアニンface-to-faceヘテロ3量体の合成を進める。
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