研究実績の概要 |
(1)分子ジッパー型 前年度に引き続いて、4重ロタキサンの4本のアルキル側鎖としてジアルキルアンモニウムイオンとピリジニウムアミドという2種類のステーションを持つ長鎖アルキル型分子レールを導入した分子ジッパーの合成に取り組んだ。4つのホスホルアミダイト型仮ストッパーを導入した4重ロタキサン型ポルフィリン・フタロシアニン分子組織に対して、末端に2,3,5-トリヨードベンゼンユニットを導入したピリジニウムアミド型分子レールを縮合することにより、目的とする分子ジッパーの生成をMALDI-TOF MSスペクトルにより確認することができた。 (2)分子リフト型 分子リフトの基本構造となる多重インターロック型ポルフィリン・フタロシアニンface-to-faceヘテロ3量体のポルフィリン部位に、金基板に配位可能なジスルフィド基を導入した分子を合成中である。 上記に加えて、昨年度本研究を遂行する過程で新たに見つかった「4重ロタキサン型ポルフィリン・フタロシアニンヘテロ二量体において、ポルフィリンとフタロシアニンを連結する4つのアルキルアンモニウム鎖のアルキル鎖長を系統的に変化させると、ポルフィリンとフタロシアニンの会合様式が大きく変化する。」という知見についてさらに研究を進めた。その結果、アルキル鎖長が6もしくは8のヘテロ二量体内部においてポルフィリンとフタロシアニンは側鎖部位の立体反発のため密にスタッキングすることができないのに対し、アルキル鎖長10の分子では両者は密にスタッキングできることが分かった。アルキル鎖長が短い場合にはその剛直性が顕在化し、側鎖の立体反発を回避する程度の構造変化を達成できないことがこの原因であると考えられる。一般的にアルキル基はフレキシブルな分子リンカーであると考えられているが、鎖長が短い場合には剛直性を考慮する必要があるという新しい知見が得られた。
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