研究実績の概要 |
高効率な有機発光ダイオード(有機EL)を実現可能な技術として熱活性化遅延蛍光(TADF)が注目されているが、青色素子など高励起準位を有する系での材料創出や実用に耐える素子の開発および将来のセンサ光源としての近赤外領域での材料・デバイス開発などに対しては多くの課題が残っている。本研究では、TADFなどの三重項励起子が関与する過程の学理の探究を進め、次世代の有機ELを与える分子システムを構築し、有機デバイスの産業化へ貢献することを目的とした。R1年度は、ホスト材料、TADF材料、発光材料について幅広い分子構造から材料探索を行い、極めて高い三重項エネルギーのホスト材料を見出し、TADF材料については励起子過程の解明を進め、量子収率100%の発光材料の創出に成功した。 R2年度では、特に発光材料について幅広い観点で取り組んだ。特に、安定性の向上については様々な知見が得られつつある(J. Mater. Chem. C 2021, 9, 4112, Nat. Commun. 2020, 11, 5623, Chem. Sci. 2021, 12, 552)。また、近赤外でも優れた量子収率を示す材料を見出しており(Adv. Opt. Mater. 2021, 2001947)、TADFをアシストドーパントとして用いた有機ELでは高い外部量子効率も実現したが(Chem. Eur. J. 2021, 27, 5259)、一方で、キャリアトラップの問題も明らかとなった。また、青色ホスト材料については、純青色ドーパントを用いた有機ELデバイスを作製し、リファレンスに匹敵する高効率を実現できた。構造の剛直性などから、素子構造をさらに最適化することにより、デバイスの耐久性向上につなげられると期待される。
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