研究課題/領域番号 |
19H02791
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
野元 昭宏 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60405347)
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研究分担者 |
牧浦 理恵 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30457436)
片岡 洋望 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (40381785)
矢野 重信 奈良女子大学, 大和・紀伊半島学研究所, 協力研究員 (60011186)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 光がん治療 / 有機典型元素 / クロリン / 一重項酸素 / 糖 |
研究実績の概要 |
腫瘍集積性が高いことが示されたオリゴ糖連結フッ化クロリンについて、光増感性能の向上のために重原子として新たに白金、パラジウムを導入した薬剤を合成した。精製したフリーベースへの直接金属導入は高温が必要なため、種々の検討の結果、初段階で導入することで合成を行った。白金、パラジウムともにほぼ定量的に導入に成功し、オリゴ糖としてマルトトリオースを導入した。白金錯体については62.7mg、パラジウム錯体については15.7㎎を取得し、細胞試験を行ったところ、フリーベースの10倍以上の殺細胞効果を示した。 バクテリオクロリンに対し、糖保護体を加える反応については、30度程度の温度が必要であることが判明した。また、フッ素NMRスペクトルでは生成物純度が十分に確認ができなかったため、さらなる精製高純度化を行ったところ、フッ素NMRにおいて目的物純度を確認することに成功した。 オスミウム酸化について、これまで6日間を要していた。しかし、実際は4日程度で反応が進行していることを確認した。糖が付いていない原料での比較実験を行ったところ、濃度を約4倍とすることで、1日で反応を進行させることにも成功した。 糖連結バクテリオクロリン誘導体は水に難溶性であったため、人体への投与が認められている界面活性剤に溶解させて700nm付近のレーザーで細胞死を確認したところ、十分に細胞死を誘導することが明らかとなった。さらに腫瘍集積性を向上させるためにホーミングペプチド、抗体との結合を行い、これらの単離に成功しUV定量に至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度計画の新薬剤として、710nm吸収バクテリオクロリン誘導体、一重項酸素発生増強ポルフィリン、700nm吸収トリアリールメタン色素の3種類の合成、単離に成功した。バクテリオクロリン誘導体、一重項酸素発生増強ポルフィリンについては、光物性の取得も完了したことからin vitroの細胞実験に進むことができ、良好ながん細胞死を誘導することができた。トリアリールメタン色素については、一般に当量の人体に有害な重金属酸化剤や三塩化リンで合成されるが、触媒酸化によって合成する手法を見出し、発光測定を行った。照射光と発光が重なる難しい測定であったが、フィルターを新たに購入し、これらの光の分離に成功し、十分な発光性を有することが明らかとなった。またこれらの薬剤はHPLCで十分に高純度であることが示された。
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今後の研究の推進方策 |
ほぼ順調に研究が推進しており、最終年度は新薬剤の大量取得、および取得薬剤のin vitroの細胞実験、in vivo実験が多くなると考えている。令和3年度は、牧浦グループで合成したバクテリオクロリン骨格に対し、糖部位の導入に成功した。しかし、大量合成における反応中での保護基の脱離が避けられなかったため、野元グループにおいて、令和4年度は脱保護条件を検討し、目的物の大量取得を行う。 牧浦グループでは、令和3年度、合成に成功した新たな薬剤骨格の発光測定を行ったことから、令和4年度は酸素吹込みによる一重項酸素発光の減少度を測定し、片岡グループに送り、薬剤活性を調べる。バクテリオクロリン誘導体についても野元グループの合成物が届き次第、一重項酸素発生の可能性をスペクトル測定から明らかにする。 片岡グループでは、令和3年度合成に成功したバクテリオクロリン誘導体で細胞死が見られたことから、測定回数を増やし、in vitroデータを確定するとともに、in vivo実験への適用を進める。 矢野グループでは、HPLCによって純度決定を行い、原料についての純度測定を進めてきたことから、新たに合成したバクテリオクロリン骨格、および中分子ペプチド各グループの新薬剤の高純度化をオープンカラム、逆相オープンカラム、GPCでの高純度化を進める。また、学会、展示会などが制限されていたが、令和4年度はオープンになることが予想され、化学メーカーへのアピールも検討し、研究成果の普遍的利用が可能な体制を作る方法を探る。
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