研究課題/領域番号 |
19H02797
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
武田 博明 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (00324971)
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研究分担者 |
青柳 忍 名古屋市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (40360838)
西田 貴司 福岡大学, 工学部, 教授 (80314540)
柳瀬 郁夫 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (10334153)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 圧電結晶 / 高温特性 / 結晶育成 / 機械的強度 |
研究実績の概要 |
地熱・火力発電所の安全管理、化学プラントの環境配慮、内燃機関の精密燃焼制御等を可能とする耐熱性の圧電センサが渇望されている。この圧電センサを実現するには1000℃の高温まで①高い化学安定性・②温度安定な圧電特性・③高い電気抵抗率・④結晶化が容易・⑤高い圧縮強度をもつ圧電結晶が必須である。本研究は、これらすべての条件を満たす新規結晶を創製し、その各種圧電センサを開発する。 今年度は燃焼圧センサとして一部実用化されているランガサイト型結晶の熱物性制御に関する研究を行った。現在、このランガサイト型結晶の燃焼圧センサ応用に新たな課題が生じている。これは、センサ素子が圧電結晶の両面が金属板に挟まれた構造がベースとなっているが、結晶と金属との熱膨張率の差から熱応力(熱応力の異方性)が発生し、この状態で異常燃焼により生じる撃力が加わると結晶が破壊されることが懸念されている。そこで、この課題の解決に向けてランガサイト型結晶に対して元素置換を行う方法を検討した。まず、四成分系ランガサイト型結晶の5種類を入手し、これらの結晶で発生する熱応力と置換サイトおよび陽イオン元素の関係を見いだした。その結果を元に、4つある陽イオンサイトで一番サイズが大きいAサイト(La)に対してSrを置換した単結晶を作製した。作製した結晶は上部が透明で下部は不透明であった。不透明部分はバブル発生のためである。透明部分から基板を作製して弾性定数と熱膨張率を測定し、熱応力の計算を行ったところ⊥c軸方向は112MPa、c軸方向は162MPaという結果になった。熱応力の異方性をc軸方向/⊥c軸方向の比で表すと、ホスト結晶とSr置換結晶はそれぞれ1.90と1.45となる。Srを置換することでランガサイト型結晶の熱応力の異方性を低減させることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在実用化されつつあるランガサイト型結晶がもつ課題を克服できる可能性を示した、新しい高温用圧電材料としてSr置換ランガサイト型結晶を合成し、そのバルク化に成功した。その圧電特性はホスト結晶と同等であることが分かり、さらなる熱応力の異方性の低減が可能であるという知見も得ている。本研究で目指している新規圧電結晶材料の開発という点で確実に進歩しており、研究計画はおおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、今年度開発したSr置換ランガサイト型結晶に関する研究を行う。今回、作製した結晶の電気抵抗率は燃焼圧センサに求められる値10Gオーム@400℃よりわずかに低い。そこで、最適な合成条件(育成雰囲気、育成後アニール)を探索することで、この値に到達させる。また、さらなる異方性の低減させる方法として、Aサイト以外の3つの陽イオンサイトに構成元素よりイオン半径の小さい元素を置換させることを考えている。この置換型結晶のバル化についても行う。一方、メリライト型結晶であるSr置換オケルマナイト結晶についてもより詳細な圧電特性、機械的強度を測定し、高温圧電材料への展開できる可能性を探索する。最も可能性の高い結晶組成において、デバイス量産化を見据え、出発原料の化学組成と育成結晶の化学組成が一致する「コングルエント組成」の探索に取り掛かる。得られた結果をとりまとめ学会発表や論文発表を行うことで国内外に成果を発信する。
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