本研究は、温度差を電力に直接変換する熱電変換材料について、耐熱性が高い物質群である酸化物系材料に着目し、高温でもナノ構造を安定に保持するため、異種材料として高い導電性を有する金属窒化物を拡散防止材料として組み合わせたナノコンポジット化を行い、優れた熱電変換性能を長期間保持できる手法を開発するものである。 2021年度は、LaドープSrTiO3(LSTO)酸化物ナノ粒子を液相合成し、さらにゾルゲル法でその表面をTiO2シェルで覆い、TiOシェルをアンモニアで窒化して窒化物シェルに変換した酸化物@窒化物コアシェル型ナノ粒子を液相合成した。得られたコアシェル型ナノ粒子の放電プラズマ焼結(SPS)により、LSTO酸化物ナノ粒子間をTiNの拡散防止層で隔てたナノコンポジット構造の形成を検討した。 LSTOナノ粒子のみのSPS焼結体の粒径は300nm前後であったが、LSTO/TiN(60%)のLSTOの粒径は100~200 nm程度のものが多く、TiNによるLSTOの粒成長の抑制が示唆される。TiNの量が増えると導電率は増大し、ゼーベック係数の絶対値は減少したため、出力因子はいったん増大してから減少したが、LSTO/TiN(20%)の出力因子はLSTO単相より17倍増大した。LSTO/TiN(60%)の格子熱伝導率はLSTO/TiN(20%)より低いだけでなく、LSTO単相と比較しても低下しており、LSTOの粒成長の抑制とヘテロ界面の増大が寄与したと考えられる。これによりLSTO/TiN(20%) の無次元性能指数ZTはLSTO単相に比べ8倍向上した。結果的に、LSTO/TiNは全ての温度域でLSTO単相よりも大幅に高いZTを示した。
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