研究課題/領域番号 |
19H02801
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松本 広重 九州大学, カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所, 教授 (70283413)
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研究分担者 |
松田 潤子 九州大学, 水素エネルギー国際研究センター, 准教授 (00415952)
多田 朋史 九州大学, エネルギー研究教育機構, 教授 (40376512)
ステイコフ アレキサンダー 九州大学, カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所, 准教授 (80613231)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 粒界 / イオン伝導 / 酸化物イオン伝導体 / プロトン伝導体 |
研究実績の概要 |
昨年度は、酸化物イオン伝導体であるイットリウムをドープしたジルコニアにおける粒界構造(原子配列モデル)の構築を試み、8-YSZの焼結体の粒界を高分解能透過型電子顕微鏡により観察するとともに、古典・第一原理分子動力学法によりTEM観察と結晶方位を合わせたシミュレーションを行って、粒界の座標のサンプルを構築することに成功した。本年度は、得られた座標について、金属の酸素配位数や酸素空孔の分布、およびドーパント(イットリウム)の偏在の有無、電荷の偏りについて検討した。その結果、粒界においては、粒界から離れたバルク部分とは、酸素配位数や酸素空孔の密度に違いがあることが突き止められた。また、粒界の付近は電荷の偏りが生じていることが判り、これまでに実験的に提案されてきた空間電荷モデルと同じような傾向にあることが分かった。シミュレーションのスケール(粒子数)を変えて、検討と解析を行っても得られる傾向に変わりは無かった。 以上の結果は、従来イオン伝導に関する粒界抵抗を説明するモデルとして提案される一方、実験的にその真偽を調べる手段がなかった空間電荷モデルが、実際に粒界において生じていることを示唆するものである。 粒界の電気化学的応答をインピーダンス特性から評価した。粒界における空間電荷のイオン伝導に与える影響を調べるために、光照射によるインピーダンスの変化を測定した。その結果、光の照射によって粒界抵抗が変化する結果が得られ、この結果もやはり、これまで提起されてきた空間電荷モデルに矛盾しない結果であった。この結果については、今後、欠陥へいこうとバンド構造から定量的な解析を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
酸化物イオン伝導体の粒界界面の再現と座標モデルの構築とその解析による粒界性質の解明、インピーダンス測定による粒界の特性の検討のどちらにおいても、計画通り検討が進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要に記したとおり、これまでに、イットリウムをドープしたジルコニアにおける粒界構造モデルの構築を行い、TEM観察から決定した方位関係における粒界をMDシミュレーションにより再現し、粒界近傍における配位数や酸素密度の違いが明らかになってきた。今後は、これらの検討結果をプロトン伝導体に拡張し、バリウムセレートおよびバリウムジルコネート系プロトン伝導体の粒界特徴を明らかにする方針である。これまでと同様の手法で、当該材料の焼結体を調製し、高分解能透過型電子顕微鏡による観察を行うとともに分子動力学法により、TEM観察と結晶方位を合わせたシミュレーションを行い、粒界の座標のサンプルを構築する。一方、インピーダンス測定にこれまでに光に対するインピーダンスの変化が観測された。この解析を行うとともに、他のイオン伝導体への拡張を検討する。
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