研究課題/領域番号 |
19H02804
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
鈴木 達 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, グループリーダー (50267407)
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研究分担者 |
鈴木 義和 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (40357281)
田村 真治 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (80379122)
小林 清 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主幹研究員 (90357020)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | イオン伝導体 / 強磁場 / 結晶配向 / 焼結 |
研究実績の概要 |
セラミックス材料においては、その微細構造因子、例えば、緻密性、結晶粒の粒径、結晶方位、第二相分散などは、材料特性を直接支配する要因となるため、微構造を制御することが重要となる。結晶構造に異方性を持ち、伝導性が結晶方向に依存する物質の場合には、結晶配向を制御していくことにより、その特性に飛躍的な改善を期待することが出来る。多価カチオンの固体イオニクス中における伝導においても、結晶配向がその伝導特性に影響を与えることは必至である。種々の物質における多価イオンの伝導機構は未だに不明であり、その解明は、多価イオンの伝導性を向上させるために不可欠である。 本年度においては、まず、3価のAlイオン伝導体であるAl2(WO4)3に注目し、その配向制御を試みた。まず、固相反応を用いて単相となる粒子を合成出来る条件を見出した。さらに、磁場配向に資する粒子とするために、ボールミルなどを用いて必要なサイズに粒径を制御した。また、磁場中でこの粒子を回転しやすくするために、スラリー中での分散条件を検討した。分散条件を最適化したスラリーを磁場中で成形することにより結晶配向を行い、その成形体を1000℃で焼結した。静磁場を用いた配向性を行った場合にはc軸配向となり、回転磁場を用いた場合にはb軸配向となることを明らかにした。このとき、c軸の配向性は68%の粒子で10度以内に揃っており、b軸配向の場合には55%の粒子が10度以内に揃っていることを電子後方散乱回折法を用いた測定より明らかにした。さらに、b軸配向によりランダム体よりもイオン伝導性が高く、c軸配向体では低くなることを確かめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
結晶配向を達成するためには、磁場配向に適した微粒子が必要となる。これには、粒子一つ一つが単結晶であり、かつサブミクロンからナノメーターサイズの粒子を作製することが求められる。まずは、固相反応法による所望の組成の単相となる粒子の合成と遊星型ボールミルなどを用いた粒径制御による粒子の作製を行う必要があった。粉砕時における不純物相の生成などを抑えながら、一つの粒子が単結晶であり適したサイズの粒子の合成に成功した。また、得られたサブミクロンサイズの粒子のスラリー中での分散制御が重要となり、このためには、コロイド科学に立脚した分散制御手法を適用し、粒子表面に電荷を付与することで静電反発力を利用した。静磁場を用いた結晶配向ではc軸配向となり、c軸が磁化容易軸であることを明らかにしたが、単結晶から予想されるイオン伝導が向上する方位はb軸となるため、配向軸を変える必要が生じた。そこで、回転磁場を用いることでb軸配向制御が可能であること示すことに成功した。さらに、それぞれの配向性に関して定量的な評価による議論を行った。また、イオン伝導性が配向方位に依存することを明らかにし、イオン伝導の向上に多結晶体でのb軸配向制御が有効であることを示すことが出来た。これらのことより概ね順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の革新的二次電池の開発では、エネルギー密度の向上と安全性、資源的な観点から、AlやMgなどの多価イオンを伝導種とする電池に期待が持たれる。しかし、現在は固体電解質中での多価イオンの導電性の低いことが問題であり、その飛躍的な向上が求められる。そこで、結晶方向に依存する伝導性を制御するために、磁場プロセスを用いた結晶配向を行い、伝導性を高めた固体電解質の開発を行う。
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