研究課題/領域番号 |
19H02805
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
木村 辰雄 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究グループ長 (20308191)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 多孔体 / メソポーラス / 無機固体化学 / ナノ機能材料 |
研究実績の概要 |
官能基として、チオフェン(-C-S-C-)、アミド結合(-NH-CO-)及びエーテル結合(-C-O-C-)を含む有機基で架橋された市販の有機架橋ホスホン酸エステル3種を出発原料に選定し、界面活性剤にPluronic F127を用いたメソポーラスホスホン酸アルミニウムの薄膜化を中心に検討した。 ・部分的に加水分解を進行させた数種類の有機架橋ホスホン酸化合物からメソポーラスホスホン酸アルミニウム薄膜の合成を行った結果、XRD測定及びTEM観察から、酸処理の程度やPluronic F127との重量比を最適化することで、架橋有機基の熱的安定性が大きく影響するが、構造規則性の高いメソポーラスホスホン酸アルミニウム薄膜が得られることを見出した。 ・噴霧乾燥プロセスを利用すれば、成膜プロセスに使用した透明な前駆溶液から粉体試料が回収できることは確認したが、構造規則性が十分に高くない(メソポーラス構造の対称性が高くない)ため、界面活性剤を抽出(除去)する過程で更に構造規則性が低下した。質の高い粉体試料を回収するためには、引き続き、乾燥速度の適正化と更なる合成条件の最適化が必要であると考察した。 ・ベンゼン架橋ホスホン酸エステル或いはその酸処理物を出発原料として、メソポーラスホスホン酸チタン薄膜の合成を行った結果、規則構造が設計できることは確認されたものの、十分ではなく、引き続き、合成条件の最適化を進めるが、チタン源100%からの合成だけでなく、アルミニウム源(例えばAlCl3)と任意の割合で混合することも検討し、連続的な組成変化の可能性を視野に入れることにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予算提案書に記載した内容の内、以下の研究成果が得られている。 1.所定の条件で酸処理した有機架橋ホスホン酸エステルの溶液31P NMR測定から、いずれのホスホン酸化合物も、同一分子構造中にエステル基(-OC2H5)と水酸基(-OH)が同時に存在しており、その割合には分布があったが、エステル基の部分的な加水分解が進行し、酸処理の条件でその程度が変化することを明らかにした。 2.部分的に加水分解を進行させた数種類の有機架橋ホスホン酸化合物からメソポーラスホスホン酸アルミニウム薄膜の合成を行った。XRD測定及びTEM観察から、酸処理の程度やPluronic F127との重量比を最適化することで、構造規則性の高いメソポーラスホスホン酸アルミニウム薄膜が得られることを確認した。 3.界面活性剤を除去するために、低温(250℃)で焼成した結果、架橋有機基がチオフェンとアミド結合を含む場合は、高い構造規則性を保ったまま界面活性剤を除去することができた。熱的安定性があまり高くないエーテル結合を含む場合は構造規則性がかなり低下し、焼成以外の方法も考慮に入れることにした。 4.触媒性能評価装置(今年度購入)により、親水性から疎水性まで連続的に制御したような特異なナノ空間内での触媒反応、例えば、酢酸とエタノールから酢酸エチルの合成とその逆反応を想定しているが、当該装置を設計する過程で議論を重ね、後者の方が実験上の問題が少ないという感触を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
以下の4つの研究項目を設定しているが、今年度に抽出された課題「構造規則性の高い粉体試料の合成と焼成以外の界面活性剤の抽出法の適用」を解決しつつ、予算提案書に記載した内容に沿った形での研究が進展できると考えている。 ①ホスホン酸アルミニウム系でシリカ並みの有機基の導入を実現する[想定期間:2019年4月~2021年3月程度]②応用展開する有機基では他の金属種(主にTi)並びにAlとの混合系を構築する[想定期間:2019年4月~2021年10月程度]③金属種と有機基の種類で整理した表面特性(親水性/疎水性)を序列化する[想定期間:2020年4月~2022年3月]④有機基に由来する吸着特性或いは触媒特性を最適化する空間環境を提案する[想定期間:2020年4月~2022年3月] 1.成膜プロセス(スピンコート)と噴霧乾燥(スプレードライ)で乾燥速度を完全に一致させることは簡単ではないので、成膜プロセスで前駆溶液の化学組成に目星を付けた後にスプレードライに適するように最適化していく。 2.架橋有機基の多様化では、市販の有機架橋ホスホン酸エステルを活用するとともに、市販以外は合成するしかないが、必要な試薬の安全性や価格等は早期に調査し、遅滞なく実施できるようにしておく。 3.粉体合成が完了したものから、適宜、水蒸気吸着測定を実施し、表面特性に関する情報を収集しつつ、酸性を示す架橋有機基を導入した一連のメソポーラス材料が整い次第、触媒反応により、本物質系の特異性を示していきたい。
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