これまでに,液固相法で合成したミクロンサイズのバナジン酸ビスマスにボールミルによる粉砕とアニール処理を施すことで高活性化できることを見出している。今年度は,固相法および錯体重合法で合成したバナジン酸ビスマスに対するボールミル処理とアニール処理の効果を検討した。固相法および錯体重合法で合成したバナジン酸ビスマスは両者ともほぼ不活性であった。しかし,固相法試料をボールミル処理すると活性が劇的に向上し量子収率は約10%となった。一方,錯体重合法試料では,ボールミル処理で若干の活性向上が見られたが量子収率は2%程度にとどまった。このように,低活性な固相法試料でもボールミル処理によって高活性化が可能であることが見出された。 当グループで開発した固溶体酸窒化物をイリジウムと酸化イリジウムの微粒子で修飾するとコバルトビピリジン錯体イオンを電子受容剤に用いた酸素生成に対する活性が向上することを昨年度までに見出している。今年度,活性向上のメカニズムを明らかにすることを目的として,逆反応を考慮しなくて良い銀イオンを電子受容剤に用いた酸素生成について種々の金属微粒子を担持した試料の活性を調べた。未担持試料および白金担持試料はほぼ無活性であったのに対して,コバルトもしくはイリジウムの金属微粒子を担持すると活性が飛躍的に向上することを明らかにした。また,酸素生成の助触媒として知られる酸化コバルトもしくは酸化イリジウムを担持した試料よりも金属担持試料の方が高活性であった。光励起電子をよく捕捉する白金微粒子を担持しても高い活性が得られなかったことから,高活性化の要因は金属コバルトおよび金属イリジウムによるトラップ制御が関与していると推察された。
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