研究課題/領域番号 |
19H02808
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
平山 雅章 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (30531165)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 光電気化学材料 / インターカレーション電極 / 全固体電池 / リチウム電池 |
研究実績の概要 |
令和元年度は研究実施計画で示した実施項目(i)電極/固体電解質界面の構築, (ii) 光電気化学特性評価, (iii) 固固界面構造の評価手法確立に取り組み,以下の成果を得た.(i)では,透明単結晶基板であるSrTiO3上にTiO2エピタキシャル膜/Li3PO4固体電解質膜/Li金属膜からなる薄膜電池をパルスレーザー堆積法およびスパッタリング法で構築した.TiO2合成条件のうち温度と加熱時間を変えることで,優れた光変換効率が期待される高品質膜を合成することができ,暗所下での電池動作を達成した.(ii)では,疑似太陽光光源を用いた光電気化学測定を実施するために,ガス循環精製装置付パージ式グローブボックスを導入し,装置の立ち上げと光学系の導入を進めた.精密な光電気化学測定では,光照射で生じる熱の影響を排除する必要がある.グローブボックス内に光源,ロックインアンプ,光チョッパを用いた光学系の構築が順調に進んでおり,令和2年度に精密な光電気化学測定を実施できる.(iii)では,光充電現象を結晶構造変化のその場観測から実証するための,放射光X線回折測定手法の構築を進めた.初年度は(i)で合成したモデル薄膜電池を用いて,暗所下での電池動作下におけるin situ X線回折測定を実施した.X線透過型の真空セルを用いることで電池動作に成功し,TiO2電極へのリチウムの可逆的脱挿入に対応するピークシフトが観測された.さらに光照射実験時に想定している回折図形の時間変化測定について問題なく実施できることを確認できた.以上より,光/化学エネルギー変換によるリチウムイオン貯蔵放出現象の開拓に必要となる全固体デバイス合成技術,光電気化学特性評価,構造解析手法の立ち上げをおおよそ完了した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,【1】全固体型光蓄電デバイスの構築と評価,【2】電極/固体電解質界面における光イオニクス現象解析,【3】光イオニクス物質開拓を目指して,以下を推し進める.(i) 電極/固体電解質界面の構築, (ii) 光電気化学特性評価, (iii) 固固界面構造の評価手法確立, (iv) 光イオニクス活性発現条件の解明,(v) 光イオニクス物質開拓.令和元年度は課題【1】【2】に注力して実験系の立ち上げと条件検討を進め,令和2年度以降に【2】で詳細な解析を実施するとともに,得られた結果を【3】へと展開することを当初計画とした.令和元年度は,「研究実績の概要」のとおり,全固体デバイス合成技術,光電気化学特性評価,構造解析手法の立ち上げをおおよそ完了し,令和2年度に詳細な反応解析を実施できる目処はついており,計画通りに成果が得られると考えている.以上より,「おおむね順調に進展している」.
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度に作製した全固体薄膜デバイス,構築した光電気化学実験系を活用して,実施計画通り,電極/固体電解質界面における光イオニクス現象解析を推し進める.前期には必要となる光学系を完成させることで,後期には様々な条件,薄膜デバイスにおける光電気化学実験を行っていく計画である.一方,情勢次第では,特に放射光実験などの外部実験の中止,延期等も想定される.その場合には,実験室で実施可能な【3】光イオニクス物質開拓を先行して推し進める計画である.
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