前年度までに,アナターゼ型LixTiO2(001)膜電極を用いて光照射可能な全固体薄膜電池を作製し,365 nmの紫外光を照射することで光酸化電流を観測した.放電時に酸化電気量と対応したLi挿入が認められたことから,光リチウム脱離反応であると結論づけた.本年度は結晶構造から光リチウム挿入を実証するために,放射光X線回折測定でLixTiO2(001)電極の004反射の挙動をその場観察した.光照射時は非照射時と比較して,回折強度およびピーク位置の変化が大きく,より多くのリチウムが脱離できることが確認できた.特にアナターゼ構造内のリチウム量が小さい組成領域で,照射時にリチウム脱離が進行しやすくなり,結晶構造の観点からも光/化学エネルギー変換によるリチウム脱離を実証できた.さらに,エネルギー準位図作成から,光照射時で価電子帯に生じた正孔は伝導帯に存在する電子よりも高電位であり,酸化反応が進行しやすいと説明された.高電位の正孔をイオン脱離反応に利用できる物質として,光非照射下では活性を示さないLi-P-O系酸化物で光酸化反応が進行し,可逆的に還元できることを見いだした.耐電圧に優れる全固体系を光イオニクスデバイスに用いることで,既存蓄電池用の設計にとらわれない材料を利用できる.以上より,当初計画項目【1】全固体型光蓄電デバイスの構築と評価,【2】電極/固体電解質界面における光イオニクス現象解析,【3】光イオニクス物質開拓,を達成することができた.
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