研究課題
単層カーボンナノチューブ(SWCNT)のチューブ内部には内表面からの表面ポテンシャルが積分され強い吸引力が働く。これによりSWCNT内部にさまざまな分子を内包することが可能となるだけでなく、内包された分子は深い表面ポテンシャルの場に存在し擬高圧効果をうける。この特異な空間に置かれた内包分子を電気化学的手法などで外部イオンと反応させることにより、新たな反応生成物をつくりだすことおよび特異な環境下での化学反応がどのように進行するのかについて知見を得ることを目的としていくつかの実験を行った。特異なチューブ内空間での反応および反応生成物を利用して新しい蓄電池、光触媒を開発した。SWCNTのヨウ素内包を利用したヨウ素-亜鉛二次電池は良好なレート・サイクル特性を示した。SWCNTに内包したニッケル金属錯体を前駆体として水酸化ニッケルを合成すると1000 C でも50 Cのときとくらべて放電容量低下は5%程度にとどまることがわかり、超高速電極として機能することを確認した。また、SWCNTに内包したヨウ素を硝酸銀に浸漬するだけでヨウ化銀/SWCNT/ヨウ素酸銀の複合体が得られ、これが可視光下で二酸化炭素還元触媒として機能することが明らかとなった。学術的な意義としては、SWCNTのチューブ内での反応および反応生成物が特異なものであることをいくつかの実例で示したことがあげられる。具体的にはSWCNTに内包されたヨウ素分子が水溶液中の銀イオンときわめて短時間に不均化反応をおこすことが明らかになった。また、SWCNTに内包されたニッケル錯体から合成したニッケルの水酸化物はバルク水酸化ニッケル結晶とは異なる物性を示すことが明らかになった。このニッケル水酸化物/SWCNT複合体試料が高速充放電電極として機能することを明らかにしたことは工業的にも意義深い。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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