研究課題/領域番号 |
19H02811
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
萩原 理加 京都大学, エネルギー科学研究科, 教授 (30237911)
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研究分担者 |
松本 一彦 京都大学, エネルギー科学研究科, 准教授 (30574016)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | リチウムイオン電池 / イオン液体 / 高温作動 |
研究実績の概要 |
昨年度明らかにしたLiとFeがディスオーダーしたルチル型LiFe2F6の研究結果に基き、2種類の酸化還元活性な遷移金属を含有する、カチオンがディスオーダーしたルチル型の正極材料Li1.2MnFe1.2F6.8 の、イオン液体Li[FSA]-[C2C1im][FSA] (1-ethyl-3-methylimidazolium bis(fluorosulfonyl)amide) 中でのリチウム挿入・脱離機構を詳細に調べた。放射光X線回折(XRD)測定とX線光電子分光(XPS)測定により、2.5-4.5 Vの電位範囲で、放電に伴いトポタクティックなMn(II)/Mn(III)、Fe(II)/Fe(III)の酸化還元反応により、ルチル型MnF2とFeF2がLiFとともに生成する反応が進行することを明らかにした。充電ではこれらの逆反応が可逆に進行することも確認している。さらに放電を低電圧まで行うと、2.5-2.0 Vの電位範囲でMn、Fe、LiFが生ずるコンバージョン反応が進行し、その際Mn(II)/Mn(0)、Fe(II)/Fe(0) の還元が、2.3V付近の電位プラトーに対応することを見出した。また、化学法では合成法が見い出されていない、トリルチル型NaFe2F6をイオン液体中でのトリルチルLiFe2F6の電気化学的脱リチウムおよびナトリウム挿入により合成することに成功した。イオン液体Li[FSA]-[C2C1im][FSA] 中でのNb2O5充放電挙動を検討し、この負極材料が高い疑似容量を発現し、高出力特性を示すことを確認した。特に90℃での運転で、10000 mAg-1で183 mAhg-1、40000 mAg-1で92 mAhg-1の容量を示し、充放電性能が著しく向上することを明らかにした。また、容量成分と拡散成分の分離を行い、電池の運転温度の上昇に伴い、容量成分が増加することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イオン液体電解質中で高温作動特性に優れている点で有望な正極材料であるルチル型Li1.2MnFe1.2F6.8 や高出力特性を示す負極材料Nb2O5について系統的な研究を行い、充放電機構について新たな知見を得ている。昨年度報告したトリルチル型LiFe2F6についての第2報、またルチル型Li1.2MnFe1.2F6.8 の充放電機構について、専門誌への出版も完了している。Nb2O5負極については現在論文投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
LiFe2F6の充放電挙動に対するイオン液体電解質中のリチウムイオン濃度の影響を検討する。Nb2O5はアルゴンイオン照射により、一部が還元され、電子伝導性を付与できることがあきらかになっており、充放電特性への影響を検討する予定である。また化学的酸化によりリチウム二次電池電極材料のSOCを制御する手法を開発し、リチウム二次電池のハーフセル試験用対極や参照極などへの応用を展開する。
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