研究実績の概要 |
イオン液体を反応媒体に用いるとナノ粒子安定化剤や還元剤を使用することなく、ナノ粒子を調製することができる。なかでも、イオン液体中に存在する金属イオン種を熱還元する方法(イオン液体-熱還元法)はワンポットプロセスで金属ナノ粒子担持炭素材料を簡便かつ大量に合成できることから、産業化への展開が期待できる技術といえる。しかしながら、学術的に重要な基礎的知見が不足しており、今年度は金属塩の種類が得られる材料や電極触媒の性能に与える影響にターゲットを絞って調査した。白金(Pt)前駆体(ビス(2,4-ペンタンジオナト)白金(II)(Pt(acac)2))、ニッケル(Ni)前駆体(Ni[Tf2N]2またはNi(acac)2)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)をイオン液体(トリメチルプロピルアンモニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド([N1,1,1,3][Tf2N]))に添加し、イオン液体-熱還元法によるPtNiナノ粒子担持MWCNT(PtNi/MWCNT)コンポジットの合成を試みた。どちらのニッケル前駆体を用いてもPtNi/MWCNTを得ることはできたが、熱安定性の高いNi[Tf2N]2を用いた場合には、ナノ粒子の粒径は小さく、ナノ粒子に含まれるNi含有量も10 at%程度低くなった。次に、PtNi/MWCNTは固体高分子形燃料電池用の酸素還元電極触媒としての利用が期待されるため、その電極触媒性能を調査したところ、市販触媒を超える耐久性を示すことが分かった。また、その傾向はNi(acac)2を用いた際により顕著となった。Ni(acac)2はNi[Tf2N]2とは異なり、[N1,1,1,3][Tf2N]への溶解度が低く、Ni(acac)2を単分散させた状態で試料作製を行ったが、本手法において前駆体のイオン液体への溶解度は大きな問題とはならないことを示唆する結果が得られた。
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