研究実績の概要 |
得られた結果の比較を容易とするため、今年度はPtナノ粒子担持炭素コンポジット材料にターゲットを絞り、イオン液体-熱還元法のワンポット合成時に使用するイオン液体や担体として使用する炭素の種類が酸素還元電極触媒の質量活性や耐久性に与える影響について調査した。 炭素材料には、MWCNT、2種類の厚みの異なるグラフェンナノプレートレットを用いた。白金前駆体にはビス(2,4-ペンタンジオナト)白金(II)、イオン液体にはトリメチルプロピルアンモニウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド([N1,1,1,3][Tf2N])および1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド([C4mim][Tf2N]))を使用した。イオン液体にPt(acac)2と炭素材料を添加し、窒素雰囲気下、573 Kで4時間撹拌することで、Ptナノ粒子担持炭素材料を作製した。 得られたPtナノ粒子担持炭素材料をTEMにより評価したところ、Ptナノ粒子の粒径は炭素材料の比表面積が大きくなるに従って小さくなったが、その際のPt担持量は炭素材料の種類に関係なく、25.5±1 wt%であった。Pt担持量は殆ど同じであったことから、比表面積の増大による核形成点の増加が粒径減少の原因であると判断した。また、Ptナノ粒子の粒径はイオン液体の種類によっても変化し、[C4mim][Tf2N]を用いると、より小さなナノ粒子が得られた。これは五員環を有する[C4mim]カチオンの方が[N1,1,1,3]カチオンよりも、Ptナノ粒子表面への吸着面積が大きく、粒子の成長を阻害する効果が大きいためと考えられる。さらに、酸素還元触媒能は、Ptナノ粒子の粒径だけでなく、炭素担体表面に存在するPtナノ粒子の数密度にも大きく左右されることも見い出した。
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