研究課題/領域番号 |
19H02817
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
薄井 洋行 鳥取大学, 工学研究科, 准教授 (60423240)
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研究分担者 |
坂口 裕樹 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (00202086)
道見 康弘 鳥取大学, 工学研究科, 助教 (50576717)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ルチル型酸化チタン / 不純物元素ドーピング / リチウムイオン電池 / ナトリウムイオン電池 / 負極 |
研究実績の概要 |
南米に偏在するLi資源に対し,Na資源は安価で入手容易なため,ナトリウムイオン電池(NIB)は大型の蓄電池に適する.ただし,Li+よりも大きいNa+を可逆的に吸蔵できる負極活物質の探索が課題である.研究代表者は種々のNIB負極活物質の創製に成功しており,特に,c軸方向の異方的なイオン拡散経路を有するルチル型TiO2の研究を独自に行っている.これまでに,ルチル型TiO2にNbをドープすると電子伝導性が向上しNa+拡散経路が広がることで,Na+の可逆的な吸蔵-放出反応が起こることを発見してきた.本研究では,ドーピングの新しい効果の発現に基づく性能向上をねらい,種々の不純物元素をドープしたTiO2の調製とNIB負極特性の評価を行った. 水熱合成法を用いて不純物元素をドープしたルチル型TiO2試料を調製した.イオンサイズが大きいSn4+(138 pm)とIn3+(160 pm)をドープした場合はその固溶量が少ないため,ドープの効果が充分に得られず負極性能の改善に至らなかった.一方,Ta-doped TiO2電極は初回サイクルから290 mA h g-1もの高い充放電容量を示した.これは,サイズが適度に大きいTa5+(128 pm)がTi4+(121 pm)を充分に置換固溶したことにより,Na+の拡散経路が拡大し,これまで使われていなかったTiO2も使われるようになったためと考えられる.第一原理計算を行った結果,NbをドープするとTiO2の拡散経路中における電子の電荷密度が増加したのに対し,最外殻電子の有効核電荷が大きいTaをドープした場合では減少していることが確かめられた.以上の結果から,ドープにより拡散経路中の電子電荷密度を減らすことで正電荷を有するNa+の移動が容易になりTiO2のNa+吸蔵-放出が促進される,新しい効果を見出すことができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の主目的は,ルチル型酸化チタンへの不純物元素ドーピングにより,そのLi+およびNa+吸蔵-放出特性の改善を図ることである.これまでに,ドーピングによる2つの効果(電子伝導性の改善,イオン拡散経路のサイズ拡大)を見出していたが,今回の研究成果は3つ目の効果が発現し得ることを示すものである.これは,ルチル型酸化チタンが潜在的に有する負極性能を最大限に発揮させるための大きな鍵となるものであり,本研究の進捗を大幅に加速するものと判断される.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに不純物元素としてNbとTaを重点的に検討し,これらの元素のドーピングがルチル型酸化チタンの電子構造および蓄電池負極特性に与える影響を解明することができた.一方で,SnやIn, Znなどの他の不純物元素はまだ充分に検討できていない.非常に大きなイオンサイズを有するIn3+や,二価のZn2+のドープにより,どのような効果が得られるかを今後詳細に調査していきたい.
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