研究課題
光触媒粉末の表面には欠陥が多数存在し、これらは光励起キャリアの再結合を促進するという説や逆に再結合を抑制するという説が提唱されてきた。しかし、どのような場合に再結合が促進され、どのような場合に抑制されるのか、意見は分かれており統一的な見解が得られていなかったのが実情である。そこで、本研究では、この矛盾を理解するために、TiO2やSrTiO3、 WO3などの光触媒粉末に水素還元処理を施して酸素欠陥を導入し、可視から中赤外域の過渡吸収をフェムト秒から秒の時間領域で測定できる独自の分光システムを使って再結合速度への影響を調べた。その結果、700℃で水素還元したルチル型TiO2と800℃で水素還元したSrTiO3は、いずれも水素還元によって再結合が抑制され、光触媒活性が向上することを見いだした。しかし、300℃で水素還元したWO3の場合には、光触媒活性が低下し、再結合が促進されることが分かった。同じ酸素欠陥でも材料によって影響が異なるのは、酸素欠陥の分布の違いで説明できる。WO3の場合、酸素欠陥ができやすく、WO2.9やWO2.83、 WO2.72といった多くの酸素欠損型が安定に存在する。このような材料では、酸素欠陥の近傍に新たな酸素欠陥が形成しやすく、複数の酸素欠陥がつながった複合体になりやすい。この酸素欠陥に捕捉された電子は、連結した欠陥の間を自由に動くことができる。したがって、再結合が加速されることになる。一方、TiO2やSrTiO3は、WO3ほど還元されやすくはない。このような場合には、酸素欠陥はまばらに存在し、欠陥に捕捉されたトラップ電子は、再結合相手である正孔と衝突するまでにホッピングやトンネリングを何度も繰り返さなくてはならない。つまり、欠陥は再結合を抑制するものと促進するものがあるが、それらの分布を上手く制御することで光触媒活性を向上できることを見いだした。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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