研究課題/領域番号 |
19H02822
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
池田 茂 甲南大学, 理工学部, 教授 (40312417)
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研究分担者 |
櫻井 岳暁 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (00344870)
野瀬 嘉太郎 京都大学, 工学研究科, 准教授 (00375106)
和田 隆博 龍谷大学, 理工学部, 教授 (20309115)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 化合物半導体 / 単結晶 / 光電極 / 水の分解 / 人工光合成 |
研究実績の概要 |
本研究では、光電気化学的な太陽エネルギーの化学エネルギー・化学物質変換反応(人工光合成型反応)における量子収率の大幅な向上を実現するため、化合物半導体単結晶を利用した高機能光電極を作製することを目的とする。ここではとくに、p型化合物半導体であるCuGaSe2に注目して、計算科学および熱力学理論に基づいて、バルク欠陥構造を精密に制御したCuGaSe2化合物単結晶を精密合成することを目指す。得られた単結晶については、さまざまな面方位でスライスすることで、露出結晶面方位の異なる薄膜を得、そのような面方位の違いによる光電極特性の変化(の有無)を評価、検証する。なお、水の分解反応などの人工光合成型反応の光電極として利用するには、pn接合形成、触媒ナノ粒子、錯体あるいは酵素による表面修飾が必要であるため、本研究ではとくに水分解水素発生反応に着目して、露出結晶面の面方位が異なる単結晶薄膜に対して表面修飾を行い、その光電気化学特性を調べる。本年度は、単結晶合成条件の精査を最初に行い、仕込みの単体原料(Cu, Ga, Se)組成を調整することで、Cu組成(Cu欠損量)の異なる単結晶が得られることを実証した。さらに、それらの単結晶を薄片化、ポスト処理(熱処理)などを行うことによる光電極化を目指し、その結果、Cu不足組成の試料において、p型の光電極特性を発現させることに成功した。また、関連する光機能性材料(光触媒、光電極など)に関しての共同研究を進めて、キャリアダイナミクス解析や二酸化炭素還元にかかるいくつかの成果を得た。これらの研究結果については、学術論文、国内および国際会議において対外発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度の研究では、狙いとする組成比制御されたCuGaSe2単結晶の合成を達成するとともに、適当な薄片化、ポスト処理(熱処理)等を施すことで、p型の半導体特性の発現を実証するに至った。国際学会および論文誌での成果発表には至らなかったが、国内会議(2件)での対外発表は実施しており、当初の期待どおりの成果が得られたと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
得られた単結晶の光電極機能の最適化として、薄片化、ポストアニーリング、表面修飾などの条件を検討する。また、切り出しの方向を制御することで、露出面の方位を制御すること、また、それによる光電極機能の依存性を調べる。また、薄膜太陽電池として主に研究されているCuGaSe2薄膜を用いた対比、検証実験を行うことで、半導体光電極として利用するための構造制御に関わる因子を抽出し、設計指針を確立することを目指す。
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