研究課題/領域番号 |
19H02825
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
高谷 直樹 筑波大学, 生命環境系, 教授 (50282322)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 糸状菌 / サーチュイン / ヒストン / 脱アセチル化 |
研究実績の概要 |
本研究は、遺伝子のエピジェネティクス発現制御に関わるサーチュイン(糸状菌由来)の阻害機能を持つ化合物を探索・精製し、汎用型の二次代謝系発現誘引物質(糸状菌用)として利用することを目的とする。糸状菌Aspergillus nidulansでは、サーチュインの阻害によりヒストンのアセチル化レベルが増加し、二次代謝系遺伝子の活性化が起こる。そこで、本研究では、この組換え酵素の活性の阻害と活性化を指標に、糸状菌培養抽出物をスクリーニング源として天然物をスクリーニングすることを目指した。具体的には、5つのサーチュインの遺伝子破壊株の作製、二次代謝産物の発現プロファイルの解明、Western blot解析によるヒストンアセチル化レベルの測定を行った。また、各アイソザイムの組換え酵素を大腸菌を用いて調製し、その活性を測定し、SirCとSirDをこのターゲットとして選抜した。本年度は、また、SirCとSirDの組換え酵素のHDA活性をハイスループットで測定する系を構築し、さらにスクリーニング条件を最適化した。また、前年度に引き続き、この系を用いて、SirCおよびSirDの活性の阻害を指標に、カビ150種 x 3培養条件の培養抽出物をスクリーニング源としたスクリーニングを達成した。その結果、複数の培養抽出物がこれらのサーチュインを阻害する活性を有することが明らかとなった。また、活性の阻害の程度は、培養抽出物にいよって異なっていた。阻害活性が強いものを選抜し、二次スクリーニングを行うことが可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までに、ターゲットとなるサーチュインアイソザイムの選定を行った。具体的には、それぞれの遺伝子破壊株の作製、二次代謝産物の発現プロファイルの解明、Western blot解析によるヒストンアセチル化レベルの測定を行った。また、各アイソザイムの組換え酵素を大腸菌を用いて調製し、その活性を測定し、上記の結果と比較した結果、SirCとSirDによるH3K18とH3K56部位の脱アセチル化が二次代謝系の発現抑制に大きく影響することを示した。また、SirCとSirDの組換え酵素のHDA活性をハイスループットで測定する系を構築し、さらにスクリーニング条件を最適化した。本年度は、前年度に引き続き、この系を用いて、SirCおよびSirDの活性の阻害を指標に、カビ150種 x 3培養条件の培養抽出物をスクリーニング源としたスクリーニングを達成した。これまでに、得られた候補化合物の反応液をHPLCに供し、SirCおよびSirDの反応産物であるニコチンアミドおよび脱アセチル化されたペプチドの生成を指標に阻害化合物を絞り込んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
得られた候補化合物について、培養のスケールアップにより候補化合物を含む抽出物を大量調製し、A. nidulansなど数種の糸状菌の培養に添加し、二次代謝産物生産の活性化能をもつものを選抜する。数種の化合物を選定し、常法に従い阻害化合物の生産菌の大量培養と阻害化合物の精製を行う。また、常法に従い、質量分析と各種NMRを用いて構造を開始する。 可能であれば、分類学上広範な種を含む~20種の糸状菌を選抜し、これらの培養に上記の化合物を添加し、培養液の抽出物を得る。これをHPLCを用いて定性分析し、当該化合物を添加していない培養から得られるそれと比較する。これにより、当該化合物の効果を検証する。
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