本研究は、遺伝子のエピジェネティクス発現制御に関わるサーチュインの阻害機能を持つ化合物を探索・精製し、汎用型の二次代謝系発現誘引物質として利用することを目的とする。糸状菌Aspergillus nidulansでは、サーチュインの阻害によりヒストンのアセチル化レベルが増加し、二次代謝系遺伝子の活性化が起こる。そこで、本研究では、この組換え酵素の活性の阻害と活性化を指標に、糸状菌培養抽出物をスクリーニング源として天然物をスクリーニングすることを目指した。これまでに、5つのサーチュインの遺伝子破壊株の作製、二次代謝産物の発現プロファイルの解明、Western blot解析によるヒストンアセチル化レベルの測定を行った。また、各アイソザイムの組換え酵素を大腸菌を用いて調製し、その活性を測定し、SirCとSirDをこのターゲットとして選抜しこららの組換え酵素のHDA活性の阻害を指標に、カビの培養抽出物をスクリーニング源としたスクリーニングを達成した。その結果、複数の培養抽出物がこれらのサーチュインを阻害する活性を有することが明らかとなった。既に得られた阻害剤との比較により、カビのサーチュイン阻害剤の構造の多様性の一端が明らかとなった。本研究成果により、サーチュインの阻害機能を持つ化合物を用いた糸状菌の二次代謝系発現誘引の技術の開発の基礎的知見が得られた。
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