研究課題/領域番号 |
19H02828
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
村岡 貴博 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70509132)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | タンパク質フォールディング |
研究実績の概要 |
生体において、タンパク質フォールディングを促進する重要なタンパク質因子としてシャペロンと構造変換因子がある。その内、本研究では、構造変換因子模倣物質に着目し、特にジスルフィド結合形成を伴う酸化的フォールディングを促進するPDIなどの構造変換因子を模倣した人工フォールディング促進剤の開発を目指している。酸化的フォールディングを促進する上で、チオール、ジスルフィド交換反応の促進が重要である。PDIなどの構造変換因子では、活性中心にシステインチオール基を有しており、この交換反応の促進に寄与している。2020年度では、タンパク質と相互作用するユニットを付与したチオール基含有低分子化合物について、相互作用ユニットとチオール基との距離の効果について調べた。相互作用ユニットとしてグアニジル基を導入し、チオール基との距離の異なる類縁化合物を複数種開発した。それらの化合物の機能を、リボヌクレアーゼやトリプシンインヒビターの酸化的フォールディング過程の追跡によって定量的に評価した結果、両ユニット間の距離が広がることで、フォールディング促進効果が低下することが示された。グアニジル基とチオール基との距離の変化によって、チオール基の酸性や酸化還元特性が変わったことから、このチオール基の化学的な性質の変化が、フォールディング促進機能の低下につながったと考えられる。この知見は、今後効率的にタンパク質フォールディングを促進する分子材料を開発する上で有効な分子設計指針を提供するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,低分子化合物と分子集合体の2つのアプローチで,酸化的フォールディング促進剤の開発を目指している。2020年度は,特に低分子化合物の開発を目的とし、分子構造の違いがチオール基の化学的特性やフォールディング促進機能に与える影響について詳細に調べることを目的としていた。これまでに,水素結合性ユニットを付与したチオール化合物を基盤として,両ユニット間の距離が酸化的フォールディング促進に与える影響を明らかにすることに成功しており,当初計画に近い形で研究が進展しいる。従って「おおむね順調に進展している」状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
タンパク質相互作用ユニットとは異なる機能性ユニットを導入したチオール化合物を開発し、機能性ユニットがフォールディング促進に与える効果を調べる。さらに,分子集合体アプローチによる材料開発にも着手し、より効率的にフォールディングを送信する人工分子材料の開発を行う。
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