研究課題
糸状菌Talaromyces islandicus の染色体上に40%以上の同一性(identity)を示すポリケタイド合成酵素遺伝子が3種類存在していることに気づいた(TiPKS1-3)。周辺に位置する遺伝子を比較したところ(図1右)、①全てのクラスターに必ず存在する遺伝子(A群)、②複数のクラスターに存在する遺伝子(B群)、③特定のクラスターにしか存在しない遺伝子(C群)がみつかったことから、これらの遺伝子群は構造類縁化合物の生合成に関与することが示唆された (図1) 。このように、一つの菌株が相同性の高い遺伝子のセットを3種類ももっている例は珍しく、天然物が構造多様性を獲得する上で重要とされている“遺伝子重複”の影響を検証する格好の研究対象と考えられた。そこで本研究課題では、①T. islandicus の染色体上に重複して存在する天然物生合成酵素遺伝子(A/B群)の網羅的解析、②特定のクラスターに存在する修飾酵素遺伝子(C群)の機能解析、③人為的な遺伝子重複による構造多様性の創出を通して、天然物が構造多様性を獲得する際の遺伝子重複の重要性やその起源を明らかにする。まず、骨格構築酵素の機能解析を行い、エモジンの生合成酵素であることを確認した。ついで、B群(クラスター2に存在)に分類される酸化酵素・還元酵素が存在するため、微生物変換および組み換え酵素を用いたin vitro解析を行った。その結果、エモジンから誘導されるクリソファノールの生合成経路を解明した。さらに、C群(クラスター1に存在)に分類されるチトクロームP450の解析を行い、エモジンの2量化を触媒することを突きとめた。さらに、本酵素の詳細な機能解析により、その基質特異性・立体選択性を明確にした。また、T. islandicusの遺伝子破壊にも成功し、人為的な遺伝子重複へ向けた遺伝子操作技術の確立も実現した。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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