研究課題
昨年に引き続き、アルキン、アジド、ニトリル等のIR官能基のVCD励起子キラリティー法への応用可能性を検証するために、各種IR官能基を二つ有するビナフチルを合成し、その実測VCDを検証した。ビナフチルを用いることにより分子のコンフォメーションの制御がある程度可能であると考えている。ビナフチルの化学変換については、これまでの文献既知反応を使用した。ラセミ体を使用し、キラルカラムによる光学分割するルート、及び、光学活性体を出発原料とする二つのルートを考慮した。キラルカラムは研究室にストックされているものを使用した。その後、VCD測定を実施し、IR特性吸収に対する分裂型VCDシグナルを比較した。VCD励起子キラリティー法を構造解析に応用する上で、二つのIR官能基の位置関係とVCDシグナル形状の相関の詳細を解明することが必要不可欠である。IR官能基間の距離や角度を様々に変化させた分子を各種合成し、これらのVCDの測定を行った。本実験で得られた知見を基に、VCDのシグナル形状からIR官能基間の位置関係、ひいては官能基が導入された分子の立体構造を正しく予測しうる方法論の構築を検討した。生体関連中分子にVCD励起子キラリティー法を応用に対して準備を行うため、中分子化合物として、アシルセラミドのカルボニル基に対してのVCD励起子キラリティー法の適用を目指し、アシルセラミドの合成を継続した。アシルセラミドは、人間の皮膚のバリア機能を担う巨大スフィンゴ脂質分子である。昨年に引き続き、アシルセラミドの全合成研究に挑戦した。
2: おおむね順調に進展している
IR官能基を有するキラルビナフチルの合成に成功している。また、それぞれの化合物に対してVCD測定を行い、IR特性吸収に対する分裂型VCDシグナルの観測に成功している。また、巨大分子であるアシルセラミドの全合成研究を実施、種々の問題点の抽出と解決に成功している。これらの結果をもとに、学会発表などの外部発表も多数実施しており、その際の討論の結果も研究にフィードバックさしている。
本年に引き続き、アルキン、アジド、ニトリル等のIR官能基のVCD励起子キラリティー法への応用可能性を検証するために、各種IR官能基を有する化合物を合成し、その実測VCDを検証する。生体関連中分子にVCD励起子キラリティー法を応用に対して準備を進行させる。現在注目を集めている中分子化学分野として、アシルセラミドを選び、そのカルボニル基に対してのVCD励起子キラリティー法の適用を行う。アシルセラミドは、人間の皮膚のバリア機能を担う巨大スフィンゴ脂質分子である。近年、アトピー性皮膚炎の原因がアシルセラミド合成酵素の欠損によるものであることが発見されている。創薬的見地からも、この巨大アシルセラミド分子の全合成研究を完了させる。本分子には二つの不斉炭素があるが、その絶対配置決定(例えば天然体)は、通常の方法では極めて困難である。まず、超長鎖脂肪酸を有するセラミドの二級水酸基にアシル基を導入することにより、VCD励起子キラリティー法の適用可能性を検証する。合成品において分裂型シグナルが観測された場合、新規の絶対配置決定法となる。天然体の超長鎖脂肪酸を含むセラミドを合成し、本法にて、絶対配置決定を試みる。さらに、バリア機能の本体であるアシルセラミドの高次構造解析に挑戦する。アシルセラミドは、細長い分子であるが、皮膚上で特殊な構造をとると考えられている。化学合成による純粋なサンプル供給し、純粋なアシルセラミドを用いて、まず、溶液中での高次構造に関する情報を得るため、VCD測定を実施する。本分子には、二つの異なるカルボニル基(エステルとアミド)を有しているため、分子間もしくは分子内カルボニル相互作用による分裂型シグナルに差異が期待される。
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Molecules
巻: 25 ページ: 4077-4088
10.3390/molecules25184077
Cells
巻: 9 ページ: 517-535
10.3390/cells9020517
https://life.sci.hokudai.ac.jp/fr/annual-report
http://altair.sci.hokudai.ac.jp/infchb/sub/publication.html