研究課題/領域番号 |
19H02838
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
三原 久和 東京工業大学, 生命理工学院, 教授 (30183966)
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研究分担者 |
堤 浩 東京工業大学, 生命理工学院, 准教授 (70398105)
三木 卓幸 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (20823991)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ペプチド / ファージ提示 / 薬剤複合体 / タンパク質相互作用 |
研究実績の概要 |
抗体代替分子(医薬品)の開発が求められる中、ファージディスプレイ法などの大規模ライブラリを利用した中分子ペプチド創薬が注目されている。本研究では、化学修飾により低分子薬剤などを複合化したペプチドファージライブラリを駆使することにより、低分子薬剤のタンパク質活性中心指向性とペプチドのタンパク質表面認識特性を合わせもつ薬剤-ペプチド複合体(Drug-Peptide Conjugate:D-PeC)の獲得を実施することを目的とした。 令和1年度は、環状ペプチドおよびStapledペプチドを提示したファージライブラリの構築と、別途、有機合成した低分子薬剤誘導体を反応させ、低分子薬剤修飾ペプチドファージライブラリの調製について検討を行った。環状ペプチドファージライブラリについては、14アミノ酸の配列をもつペプチドライブラリの調製を検討していたが、調製したライブラリの多様性が理論的な多様性を十分に満たすことができなかった。そこで、本年度(令和2年度)は、8アミノ酸の配列に変更した環状ペプチドファージライブラリの構築を行い、理論的な多様性を満たしたファージライブラリを調製することができた。また、大腸菌発現系を利用して、スクリーニングに用いる標的タンパク質の調製について検討を行い、ガレクチン、DHFR、HDM2の発現調製に成功した。これらのタンパク質を標的として、ファージライブラリのスクリーニング条件の検討を行い、最適化を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和1年度に構築したペプチドファージライブラリのうち、14アミノ酸の配列をもつペプチドライブラリは、調製したライブラリの多様性が理論的な多様性を十分に満たすことができなかった。そこで、令和2年度で、8アミノ酸をもつ配列に変更したペプチドファージライブラリの構築を行い理論的な配列多様性を十分にカバーするファージライブラリを調製することができた。 令和1年度に、ペプチドファージライブラリに修飾するための低分子薬剤誘導体として、ガラクトース誘導体、スルホンアミド誘導体、ヒドロキサム酸誘導体、架橋剤誘導体を合成した。これらの誘導体をファージ上に提示したペプチドに修飾するために、令和1年度に反応溶媒やpH、温度等について種々の条件検討の結果、反応条件を最適化することができた。令和2年度は、この最適化した条件をもとに、合成した低分子誘導体を反応させ、低分子薬剤修飾ペプチドファージライブラリを構築することができた。 令和2年度は、スクリーニングに使用する標的タンパク質を、大腸菌発現系を用いて調製する検討を行った。一部のタンパク質については、活性なタンパク質を必要量、調製するには至らなかったが、ガラクトース結合レクチン(ガレクチン)、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、HDM2については、発現条件と精製条件を最適化することにより、十分量の発現タンパク質を調製・精製することができた。これらのタンパク質を標的として、ファージライブラリのスクリーニング条件の検討を行い、最適化を行った。 計画は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度の研究計画を完遂した後、令和3年度に計画している「標的タンパク質に特異的な低分子薬剤修飾ペプチド(Drug-peptide conjugate: DPeC)のスクリーニングと機能評価」を実施する。標的タンパク質としてガレクチン3等を用い、最適化を行ったスクリーニング条件に従って、標的タンパク質に結合するペプチド提示ファージをスクリーニングする。順調にスクリーニングが進んだ場合、スクリーニング後のファージプールからファージのクローニングとDNA配列解析を実施し、特定のペプチド配列が濃縮されているかを確認する。また、クローニングしたファージを用いたELISA実験を行い、合成対象となる候補ペプチドの選別を行う。候補ペプチドを化学合成し、標的タンパク質に対する結合活性を評価する。
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