研究課題/領域番号 |
19H02839
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
北 将樹 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (30335012)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | タンパク質間相互作用 / 天然物リガンド / アクチン / 標的分子同定 / 微小管阻害剤 |
研究実績の概要 |
抗腫瘍性天然物アプリロニンAは、細胞骨格タンパク質であるアクチン・チューブリン間のタンパク質間相互作用 (PPI) を誘導して微小管ダイナミクスを阻害するという、新しいメカニズムでがん細胞の増殖を抑制する。有機小分子-アクチン複合体がチューブリンに直接作用する、もしくは微小管阻害薬がアクチンの重合ダイナミクスにも影響する例は過去になく、本化合物の作用は非常にユニークである。本研究ではアクチンに作用する様々な天然物リガンドに注目して、創薬標的となる新たなPPI機能作用点の特定および関連する運動マシナリーの解明を目指した。 アプリロニンAについては、これまでに得た光ラベル化反応の知見に基づいて三元複合体モデルをin silicoで構築し、さらに上位10種について分子動力学計算を行い、微小管を構成するチューブリン分子の外側に、アプリロニンAがアクチンとともに配位するという妥当なモデルを得た。さらに、in vitro で再構築した三元複合体について、ネガティブ染色および凍結標本について電子顕微鏡による観察を種々検討した。現在、元の微小管と比較してどのような構造変化がみられるか、解析を進めている。 さらに、光親和性プローブで導入するリンカー部分の構造を見直して、アジド基やアルデヒド基を持つ様々な天然物・合成リガンドを1段階で光親和性プローブに誘導する方法を確立した。今後は予備的実験で確認した第2標的分子についてラベル化の特異性を評価し、さらに酵素消化とLC-MS/MS解析、プロテインシーケンサ等によりプローブの結合位置を決定する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アクチン脱重合活性を保持した新規合成リガンドを開発し、想定していた活性評価と機能化を達成した。また創薬研究者らの協力を得て、アプリロニンAが誘導するアクチン・微小管のクライオ電子顕微鏡による観察・解析に実際取り掛かっており、順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の実施に向けて、抗癌剤など生物活性リガンドとアクチン作用性側鎖部リガンドを連結した人工PPI誘導分子を創出する。これまでに側鎖部リガンドの合成手法の最適化に成功したので、様々な生物活性リガンドと如何に簡便に連結するか、生物共役反応の最適化と迅速な機能評価を目指していきたい。
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