研究課題/領域番号 |
19H02841
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
安井 典久 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (90467514)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 進化分子工学 / 代理リガンド / 人工タンパク質 / エンドサイトーシス / LDL受容体 / 一本鎖モネリン / 分子骨格 / ファージディスプレイ |
研究実績の概要 |
Low-density lipoprotein (LDL) 受容体の代理リガンドを作製するために,本年度において,LDL受容体の細胞外領域断片を浮遊系動物細胞で分泌発現し,in vitroでビオチン化するシステムを構築した。このシステムを用いることにより,様々なビオチン化LDL受容体の細胞外ドメインについて組換えタンパク質を分泌発現し,細胞培養上清からアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。そして,精製ビオチン化細胞外ドメインをベイトとして,申請者らが独自に構築した一本鎖モネリン (single-chain monellin; scMonellin) を分子骨格とするファージディスプレイライブラリ (Yasui et al., J Biochem. 2021) の選別を行った。4ラウンドの選別とELISAを用いたファージクローンの標的タンパク質への結合を確認した結果,LDL受容体の複数のドメインそれぞれに対して結合するscMonellin変異体を同定した。次に,ファージに提示された状態で標的ドメインに結合することが確認されたscMonellin変異体について,大腸菌発現系を構築し,組換え発現とアフィニティークロマトグラフィーによる精製を行った。精製標品を用いて,溶液挙動と標的ドメインへの結合をゲルろ過クロマトグラフィーで解析した。その結果,複数のscMonellin変異体について,溶液挙動がよく,標的のLDL受容体細胞外ドメインに結合することが分かった。 一方で,標的ドメインに結合する人工タンパク質を用いた培養細胞の蛍光免疫染色とその解析を効率よく実施するために,蛍光顕微鏡システムを購入した。初期のセットアップを無事に完了させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
scMonellinのファージディスプレイライブラリの選別により,LDL受容体細胞外領域の複数のドメインに結合する人工タンパク質が得られたことから,本研究の最初の段階の突破に目処がついた。一方で,予定していた結晶構造解析,定量的な相互作用解析および培養細胞を用いた蛍光免疫染色に着手することができなかった。以上のことから,上記の進捗状況であると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度から引き続き,LDL受容体ファミリー群の細胞外領域を構成する各ドメインに対し特異的に結合するタンパク質性の代理リガンドを網羅的に作製する。タンパク質性代理リガンドの作製には,進化分子工学の手法を用いる。具体的には,研究代表者が構築した一本鎖モネリンを分子骨格とするコンビナトリアルライブラリを利用する (Yasui et al., J Biochem. 2021)。LDL受容体ファミリー群の細胞外領域を構成する各ドメインの組換えタンパク質調製は昨年度にほぼ完了させたので,LDL受容体ファミリー群の各ドメインに結合する代理リガンドの候補となる人工タンパク質を選別する。 ライブラリの選別により得られた代理リガンド候補について,組換えタンパク質を発現・精製し,様々な分子特性解析を行う。具体的には,①ゲルろ過クロマトグラフィーによる溶液挙動の解析および標的ドメインとの相互作用解析,②タンパク質サーマルシフトアッセイによる熱安定性の評価,③表面プラズモン共鳴測定による標的ドメインとの相互作用解析,および④標的ドメインとの複合体の結晶構造解析に取り組む。 一方で,すでに低親和性ながらも数種類の人工タンパク質が得られている。そこで,代理リガンドがLDL受容体ファミリータンパク質のメンブレントラフィック機構に及ぼす影響を調べるために必要な実験系 (培養細胞を用いた蛍光免疫染色) の立ち上げに着手する。そのために,昨年度に購入した蛍光顕微鏡システムを活用する。
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