低密度リポタンパク質受容体 (LDL受容体) ファミリーは,様々なタンパク質性リガンドをエンドサイトーシスにより細胞内へと取り込む。これら受容体群は,もっぱらリサイクリングを繰り返すと考えられてきたが,近年,受容体細胞外領域に結合するリガンドの種類により,細胞外領域のコンフォメーション状態とリサイクリング過程とが異なることが明らかになりつつある。一方で,自然界に存在するLDL受容体ファミリーのリガンド群は,種類が限られている上に化学組成が不均一であるために試料調製や取り扱いが困難である。そこで本研究では,自然界のリガンド群の結合では見出されていないコンフォメーションの安定化が可能なLDL受容体ファミリーに対するタンパク質性“代理リガンド”を創製し,それらを利用することで,LDL受容体ファミリーの細胞外領域のコンフォメーションとメンブレントフィック過程の相関関係を解明することを目的とした。 昨年度に引き続き,独自に構築した一本鎖モネリン (scMN) を分子骨格とする人工結合タンパク質 (SWEEPins) のファージディスプレイライブラリーを用い,LDL受容体の各ドメインに結合する人工タンパク質を作製した。新しくLA3-4およびLA4-5に結合するSWEEPinをライブラリーより取得した。LA3-5の領域は,LDL粒子をはじめとするLDL受容体の天然のリガンド結合領域でもあり,得られたSWEEPinの利用用途は広い。 一方で,scMNの熱安定化変異体を作製することに成功した。SWEEPinライブラリーにおいて,アミノ酸配列を多様化させる2本のループのうちloop 2の長さに制限があるという欠点があった。作製した熱安定化変異体を分子骨格として用いることで,loop 2をこれまでよりも長くしたライブラリー作製に関する基礎データを取得することができた。
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