研究課題/領域番号 |
19H02842
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
岡田 正弘 神奈川大学, 工学部, 教授 (40377792)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 翻訳後修飾 / クオラムセンシング / フェロモン / ペプチド / トリプトファン |
研究実績の概要 |
まずは、データーベースを最新のものに更新してトリプトファンプレニル化酵素を探索したところ、新たにいくつかのプレニル化酵素の候補タンパク質が検出された。その中には、シアノバクテリア門由来や、放線菌門由来の候補タンパク質が存在した。それらの殆どが、入手が困難な生産細菌であったため、候補タンパク質をコードする人工DNAを購入した。また、嫌気性細菌であるクロストリジア網細菌が入手可能であったので購入し、そのDNAを鋳型に用いて、大腸菌にて過剰発現を行った。なお、C末端にHisTagを導入した場合に不溶性タンパク質となってしまった場合にはN末端にHisTagを導入した。一方で、基質となるトリプトファン含有ペプチドについては、トリプトファンそのものの誘導体を含め、20残基までの短鎖ペプチドについては化学合成により準備した。また、20~100残基までの中鎖ペプチドについては、人工DNAを安価なプライマーから自作し、大腸菌にて過剰発現を行った。現在は、ペプチドの化学的安定性や可溶性を考慮した、簡便な生成方法の検討を行っているところである。 最終的に得られたプレニルトリプトファン残基を有する修飾ペプチドについては、修飾ペプチドを精製して構造解析を行うことは困難であると想定されるため、決定したアミノ酸配列および推定修飾構造を有する修飾ペプチドを化学合成し、両者を比較することで構造を確定させる予定であるが、既に確立済みである液相合成法によるプレニルトリプトファン残基の合成ルートについての改良を行った。これまでは、初期の段階で予めジアステレオ異性体を分離した後に合成を行っていたが、プレニルトリプトファンエステルの合成を行った後に分離する改良ルートを検討した結果、大幅に総収率が改善できることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まずは、最新データーベースに対してトリプトファンプレニル化酵素を探索したところ、新たにいくつかのプレニル化酵素の候補タンパク質が検出されたが、その中には、例えばプレニル二リン酸合成酵素のような、他の酵素活性を有する既知のタンパク質は一切検出されなかったことから、トリプトファンプレニル化酵素のデータベース上からの網羅的検索方法の有効性が示されたと考えられる。なお、通常のBLAST検索条件では、むしろ既知のタンパク質の方が多く検出されてしまう。 また、これまでのプレニルトリプトファン残基の合成ルートでは、合成に通常2週間程度かかっていたものが、今回の改良ルートでは1週間かからないぐらいの時間で合成することが可能となると予想でき、時間の大幅な短縮が見込まれる。なお、終盤の段階で分離、精製するため、純度に問題が生じる可能性があるが、さらなる条件検討を行うことで、さらに収率を改善できれば、そもそもの純度も向上し、精製の手間も大幅に減ることが見込まれる。 なお、現在、人工DNAを用いた候補タンパク質の過剰発現プラスミドと、自作DNAを用いた基質ペプチドの過剰発現プラスミドを、それぞれ同じ大腸菌に導入して修飾ペプチドを過剰発現させる条件検討を行っている。目的の修飾ペプチドを生産させることには成功しているものの、別々に過剰発現させたときと比較すると、候補タンパク質や基質ペプチドの発現レベルが著しく低下する場合もあり、さらなる条件検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
現在、新型コロナウイルスの影響のため、大学が閉鎖され、研究室内での実験の遂行ができない状態となっている。いつ研究室閉鎖が解除されるか予想困難なため、今後の研究の推進方策がどの程度実行できるかも予測困難であることを予めご了承願いたい。まずは、トリプトファンプレニル化酵素のデータベース上からの網羅的検索方法の有効性が示されたと考えられるため、これまでに得られたトリプトファンプレニル化酵素の構造的特徴や、配列的特徴を考慮した条件検討を行い、最新データーベースに対してトリプトファンプレニル化酵素の検索条件を確立する。 次に、トリプトファンイソプレニル化酵素の候補タンパク質を過剰発現させる。昨年は、候補タンパク質の生産細菌のDNAを鋳型に用いたが、今年度は、人工DNAを鋳型として用いて、トリプトファンイソプレニル化酵素の候補タンパク質を過剰発現させる。 得られた候補タンパク質を酵素として、トリプトファンもしくはその誘導体を気質として、ファルネシル二リン酸をプレニル化剤として用いた in vitro プレニル化反応を行い、目的の修飾ペプチドを生合成する。続いて、反応液中から目的のプレニルペプチドを検出する。プレニル基は逆相ODSカラムに対する親和性が比較的高く、吸着されやすいため、プレニル化ペプチドと通常のペプチドとはある程度分離、区別することができる。そこで、通常よりも低極性領域に検出 されるゲラニル基相当、もしくは、ファルネシル基相当のフラグメントイオンを有するシグナルに着目したLC-MS分析を行い、さらに、MS/MS分析によりペプチドであることおよびそのアミノ酸配列 (の一部) を決定する。
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