私たちの身体を構成する物質は、絶えず入れ替わる必要があり、細胞内分解の乱れや停滞は疾患や老化につながります。オートファジーは、細胞内分解系であり、栄養源取得、代謝回転、有害物除去の働きを持っています。オートファジーの一部は、基質選択性を有しているが、その機序は完全には解明されておらず、治療目的での選択的分解には未だ道のりがあります。 本研究では、細胞内に蓄積する有害物質を選択的にオートファジー分解する手法の開発を目指しており、前年度にAUTAC(autophagy-targeting chimera)という手法を報告しました。 今年度は、ミトコンドリアの分解に焦点を当てて研究を継続しました。 まず、これまで評価に用いてきたダウン症由来線維芽細胞に加えて、別の疾患の線維芽細胞を取り寄せ、その特性を解析しました。この疾患ではミトコンドリア機能が低下することが知られており、AUTAC化合物を投与すると膜電位の改善が見られました。予期せぬことに、この線維芽細胞の性質が大きく変化し増殖速度が低下し、調査研究の継続が困難になったため、繰越を行なって、新たな細胞試料の入手を行いました。 これまでの研究は2019年に発表したAUTAC4を用いて実施した。化合物の活性向上を目指して、AUTACの標的化リガンドの構造改変を行い、AUTAC4よりも優れた特性を持つ新規AUTACを得ることできた。
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