研究課題/領域番号 |
19H02845
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鬼塚 和光 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (00707961)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 核酸高次構造 / 核酸化学修飾 / DNA / RNA / G-四重鎖 / 誘起反応性 |
研究実績の概要 |
生体夾雑系における核酸高次構造の選択的な化学修飾は、生命現象の制御や解明にとって非常に重要である。一方で、生体夾雑物や標的以外の核酸との副反応の回避は非常に難しい課題である。本研究課題では標的と選択的に反応する反応素子の創製を目指し、標的誘起反応性を有する新しい核酸修飾素子の開発に取り組んでいる。新規反応素子の開発と核酸高次構造に対する強力な阻害剤開発を目指し、4つの目標(①: 標的誘起反応性のための最適脱離基の探索、②: 標的構造選択性の付与、③: 化学修飾RNA探索法の開発、④: 細胞での機能評価および機能探索)を設定し、今年度は①-③の研究を進め、下記の成果が得られた。 ①: 標的誘起反応性のための最適脱離基を探索するため、新規反応素子安定前駆体の脱離基を種々検討した結果、従来分かっていたチオール類だけでなく、OH基やアミン類なども脱離基として機能することが明らかになった。これは生体夾雑系使用での問題の一つである完全な不活性化がおきないことを示唆しており、新規性の高い知見である。 ②: 標的構造選択性を付与するため、従来反応性スクリーニングに用いていたアクリジンの代わりに四重鎖構造(G4)に対して選択的に結合するユニット(テロメスタチン誘導体)を反応性基にコンジュゲートした。合成したリガンドを蛍光標識したG4DNA、RNA、一本鎖、二本鎖構造に対する反応性評価をゲルシフトアッセイにて行ったところ、G4RNA選択的な化学反応が観測された。G4DNAとG4RNAの区別は極めて興味深い結果であり、応用研究も含め今後進展させていく予定である。 ③: 化学修飾RNA探索法の開発では、RNA-リガンドマイクロアレイ法を用いて反応性の網羅的解析を行った。現在のところ、1824種の配列の反応性ランク化を実施し、妥当な結果が得られている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
新規反応素子の開発と核酸高次構造に対する強力な阻害剤開発を目指し、4つの目標(①: 標的誘起反応性のための最適脱離基の探索、②: 標的構造選択性の付与、③: 化学修飾RNA探索法の開発、④: 細胞での機能評価および機能探索)を設定し、今年度は①-③の研究を進め、それぞれ計画通り、または予想以上の結果が得られており、総合的には当初の計画以上に進展していると考えている。 ①: 標的誘起反応性のための最適脱離基を探索するため、新規反応素子安定前駆体の脱離基を種々検討した結果、従来分かっていたチオール類だけでなく、OH基やアミン類なども脱離基として機能することが明らかになった。これは生体夾雑系使用での問題の一つである完全な不活性化がおきないことを示唆しており、新規性の高い知見である。 ②: 標的構造選択性を付与するため、従来反応性スクリーニングに用いていたアクリジンの代わりに四重鎖構造(G4)に対して選択的に結合するユニット(テロメスタチン誘導体)を反応性基にコンジュゲートした。合成したリガンドを蛍光標識したG4DNA、RNA、一本鎖、二本鎖構造に対する反応性評価をゲルシフトアッセイにて行ったところ、G4RNA選択的な化学反応が観測された。当初、G4DNAとG4RNAの区別は期待しておらず、G4RNA選択的な化学修飾は予想外の成果であった。G4RNA選択的な化学修飾はRNAの機能制御、機能探索に極めて重要な技術であり、今後この反応の更なる調査、応用を改めて計画している。 ③: 化学修飾RNA探索法の開発では、RNA-リガンドマイクロアレイ法を用いて反応性の網羅的解析を行った。現在のところ、1824種の配列の反応性ランク化を実施し、妥当な結果が得られており、順調に研究が進んでいる。同時に結合性の網羅的解析も進めており、こちらでも良好な結果が得られいる。
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今後の研究の推進方策 |
4つの目標(①: 標的誘起反応性のための最適脱離基の探索、②: 標的構造選択性の付与、③: 化学修飾RNA探索法の開発、④: 細胞での機能評価および機能探索)に関して来年度は以下のように計画している。 ①: 標的誘起反応性のための最適脱離基をさらに探索するため、pKaの異なるチオール、様々な構造を持つアルコールやアミンなどを検討する。通常は安定であり、かつ反応収率・効率の高い反応素子の創製を目指す。 ②: テロメスタチン誘導体の反応素子コンジュゲート体がG4-RNA選択的な化学反応性を示したので、G4-RNAとDNAの反応効率の違いの考察、汎用性など、より詳細に機能を調査する。他のコンジュゲート体の合成も進め、新たな高次構造修飾分子の開発も引き続き行う。 ③: 化学修飾RNA探索法の開発では、今年度成功したRNA-リガンドマイクロアレイ法の適用範囲の拡張を目指す。現在、実施例が少なく、汎用性を調査するため、様々な分子に適用し、その妥当性を調査する。 ④:実際に細胞での機能を評価する。反応素子の有無で生物活性にどのように変化を与えるか、化学修飾による影響を詳細に調査する。反応素子により阻害活性は増強するか?新たな生物活性が生まれるか?それぞれの標的に合ったアッセイ系を確立し、機能を調査する。
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