本研究課題では標的と選択的に反応する反応素子の創製を目指し、標的誘起反応性を有する新しい核酸修飾素子の開発に取り組んでいる。新規反応素子の開発と核酸高次構造に対する強力な阻害剤開発を目指し、4つの目標(①: 標的誘起反応性のための最適脱離基の探索、②: 標的構造選択性の付与、③: 化学修飾RNA探索法の開発、④: 細胞での機能評価および機能探索)を設定し、過去2年の①の研究で得た最適構造をもとに、本年度は②-④の研究を進め、下記の成果が得られた。 ②: 標的構造選択性を付与するため、これまでに行った四重鎖構造(G4)に対して選択的に結合するユニット(テロメスタチン誘導体、ベルベリン)に加え、ピリドスタチン、ピクサントロンへ反応性基をコンジュゲートした。ピリドスタチンには3つ、ピクサントロンには2つの反応性基を修飾できるため、クロスリンカーとしての効果も期待した。合成したリガンドを蛍光標識したG4DNA、RNA、一本鎖、二本鎖構造に対する反応性評価をゲルシフトアッセイにて行ったところ、どちらともG4構造選択的な反応が観測された。合成面も考慮して、以前に開発したベルベリンとピリドスタチン、ピクサントロンの3つに関してスケールを上げてコンジュゲート体を合成し、④の研究に用いた。 ③: 化学修飾RNA探索法の開発では、RNA-リガンドマイクロアレイ法を用いて反応性の大規模解析を行った。昨年度、1824種の配列の反応性ランク化を実施し、ランク上位の配列の中で疾患に関与するpre-miRNAが含まれていたため、そのRNAに対する反応点の検証などを行い反応の詳細を調査した。 ④:分子プロファイリング支援活動を利用して、合成した化合物の細胞株パネル(さまざまな臓器がん由来の細胞株計39種)に対する細胞増殖阻害活性を調査した。その結果、反応性化合物の中で著しい阻害活性を持つものは見られなかった。
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