昨年度の化合物スクリーニングから得られたN6-メチルアデノシン(m6A)脱メチル化酵素FTO阻害剤の候補化合物に関して、共通する骨格を有する誘導体に関してもFTOに対する活性阻害評価を行い、阻害効果を発揮するのに重要な要因に関して情報を得ることができた。また、二価鉄イオンとケトグルタル酸といった、脱メチル化酵素に共通する基質を必要とするRNA脱メチル化酵素ALKBH5に加えて、DNA5-メチルシトシン(5mC)の脱メチル化酵素であるTETタンパク質に関しても阻害効果を検討した。ALKBH5およびTETの脱メチル化活性は、m6A感受性RNA切断酵素MazFを用いたFRETアッセイ、および、5mC抗体を用いたELISAにより、それぞれ検討した。その結果、これらの候補化合物はALKBH5にもTETにも作用しないことが確認された。さらに、候補化合物のFTO阻害様式の検討を行い、鉄イオンの結合やケトグルタル酸の結合には影響を与えないことを確認した。また、RNA配列選択的にRNAのメチル化状態を制御する分子ツールを細胞内で効率よく活用するための検討を行った。配列選択的にRNAを認識することができるPUFタンパク質を複数個デザインし、1種類のmRNAに対して、複数種類のPUFタンパク質を併用することによって、1種類のPUFを発現させた場合と比較して、少ない発現量で高いRNA制御効果を得られることを明らかにした。また、ウイルスRNAの高次構造形成領域にm6Aが存在するというバイオインフォマティクス解析結果が報告されたことから、RNAメチル化制御酵素とRNA高次構造との相互作用を解析する系の構築を行った。
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