研究課題/領域番号 |
19H02858
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
青野 俊裕 東京大学, 生物生産工学研究センター, 講師 (10372418)
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研究分担者 |
江澤 辰広 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (40273213)
小川 哲弘 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (40323480)
石綱 史子 東京家政学院大学, 現代生活学部, 准教授 (40772281)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 根粒菌 / 病原菌 / 共生 |
研究実績の概要 |
非マメ科植物に窒素固定を発揮させることは、農業上重要な課題である。セスバニア根粒菌は、マメ科植物セスバニアに根粒・茎粒を形成するが、非マメ科植物のエンドファイトでもあり、単生窒素固定細菌でもある。我々は近年、本菌はR-body生産という病原菌的側面を持っており、セスバニアへの細胞内感染後に宿主細胞を殺傷できること、本菌は非マメ科植物であるシロイヌナズナの全身に、部位によっては細胞内にも感染できること、を見出している。宿主の細胞死を誘導し感染領域を広げることは病原菌の感染戦略の一つである。そこで、本菌の病原性と感染性を最大限に制御・利用すれば、広範囲の非マメ科植物に本菌を定着させ、高い窒素固定活性を発揮させることができると我々は考えている。その基盤を築くため、本研究では、R-bodyの生産機構と病原性作用機序の解明と、シロイヌナズナへの全身感染・細胞内感染機構の解明を目的としている。 R-bodyとは、reb遺伝子群にコードされる低分子タンパク質群がポリマー化した巨大構造体である。セスバニア根粒菌は、reb遺伝子群と自己転写促進因子をコードするrebオペロンを持っており、通常はrebオペロン外の転写因子群によってその発現が抑制されていることをこれまで明らかにしてきた。本年度は、rebオペロン外の遺伝子にコードされる転写因子MreR (MarR-family transcription factor required for reb-operon expression)が、rebオペロンの発現に必須であることを見出した。また、MreRの認識DNA配列を同定した。このことから、rebオペロンの発現制御系は想像以上に複雑で有り、R-body生産は巧妙に環境応答していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シロイヌナズナに対する全身感染メカニズムに関しては、大きな進展がなかったが、R-body発現機構に関しては、新たな制御系を見出すことができ、全体としては、進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、セスバニア根粒菌とシロイヌナズナの共生系に関して、感染培養系にトラブルがあったため、中断していた。次年度以降、この共生系に関しても推進する。セスバニア根粒菌のR-body生産に関しては順調に進んでいるので、引き続き推進する。
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