今後の研究の推進方策 |
1年目はおおむね順調に進んでいるため、2年目は当初の計画通り、以下の4つの課題を実施し、菌根共生に関与する植物の脂質合成・輸送・制御機構を明らかにする。 1.脂質合成関連遺伝子の機能解析:脂肪酸合成関連遺伝子については、脂肪酸の活性化に関与するアシルCoA合成酵素(LACS)について菌根共生における機能を解析する。ミヤコグサの挿入変異体と過剰発現個体を用いて、共焦点レーザー顕微鏡などを用いて詳細に形態を観察するとともに、組み換えLACSタンパク質を用いて脂肪酸に対する特異性を明らかにすることで植物が産生する脂肪酸の分子種を推定する。 2.脂質輸送遺伝子の機能解析:脂質輸送に関しては、菌根誘導性の脂質輸送タンパク質(LTP)とGDSLリパーゼに着目して、RNAi法で発現抑制系統を作出し、菌根共生の表現型を解析する。LTPは分泌タンパク質として予想され、菌根菌へ脂質を直接輸送している可能性がある。そこでLTPについては、その局在を免疫電顕で解析し、脂質の輸送過程を追跡する。 3.脂質合成制御遺伝子の機能解析:菌根特異的脂質合成の制御に関わると考えられるWRI5転写因子について、前年度に引き続きRNA-seqの解析を行う。 4.脂質同定:脂質合成変異体(DIS, FatM, RAM2, STR)の解析から、植物から供給される脂質はsn-2 モノパルミチン酸グリセリルと考えられているが、今のところ直接的な証明はない。本課題では、上記の課題で作出する輸送系遺伝子(LTP, GDSLリパーゼ)の変異体を利用して、脂質を分析し輸送される脂質を推定する。脂質/脂肪酸の分析には、LC-MS/MSやガスクロマトグラフィーを利用する。今年度は、またレーザーマイクロダイセクションで切り出した感染細胞についても脂質/脂肪酸分析を行うため、切り出しの条件検討や分析法を検討する。
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