1)エルゴステロール生合成酵素遺伝子の発現制御におけるAtrRとSrbAの相互作用解析:AtrRとSrbAのそれぞれに3×FLAGとGFPタグを付加して宿主株に導入・発現させ、共免疫沈降法を行ったところ、両転写因子の複合体形成が示唆されたものの、再現性の高い結果を得るには発現量の最適化が必要であると考えられた。一方、AtrRとSrbAのそれぞれにGFPのN末端とC末端を連結させたBiFC法により、両転写因子間に弱い相互作用があることが示唆された。 2)カルコフロールホワイトとコンゴーレッド感受性に関与するMedAとSfgAの機能解析:MedAとSfgAにより制御される遺伝子群の網羅的な探索を行うために、野生株と破壊株を用いたRNA-seq解析を行った結果、medA破壊株ではアミラーゼ系の酵素遺伝子の発現量が減少していることが見出された。また、小胞体ストレス応答に関わる遺伝子の発現量の減少も認められた。一方、sfgA破壊株では分泌型のプロテアーゼやペプチダーゼ遺伝子の発現量が低下していることが示唆された。このうち、アミラーゼ系酵素遺伝子についてqRT-PCRによって経時的な発現量を調べたところ、α-アミラーゼ遺伝子(amyA/B/C)やグルコアミラーゼ遺伝子(glaA)の発現量は、野生株と比較してmedA破壊株ではマルトースによる誘導後の各時間帯において有意に減少していることが認められた。マルトースの細胞内取り込みに関わるマルトース輸送体(malP)やマルトースからイソマルトースへの変換に関わるマルターゼ(malT)の発現量には違いはなく、またアミラーゼ系酵素生産に必須の転写因子(amyR)の発現量も野生株とmedA破壊株では差が認められなかったことから、MedAはAmyRによる発現制御とは独立した機構でアミラーゼ遺伝子の発現を制御している可能性が示唆された。
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