研究課題/領域番号 |
19H02868
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
田岡 東 金沢大学, 生命理工学系, 准教授 (20401888)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 細菌 / オルガネラ / イメージング / 細胞骨格 / 磁性細菌 |
研究実績の概要 |
本研究では、磁性細菌のマグネトソームの細胞内配置と機能を制御するための仕組みを分子レベルで明らかにすることを目的とする。マグネトソームを原核細胞オルガネラのモデルとして、アクチン様細胞骨格によるオルガネラの配置や機能制御の仕組みを解明する。 本年度は、MamK細胞骨格によるマグネトソーム配置機構をナノレベルの分解能で観察し、その分子機構を解析するためMamK細胞骨格のin vitro再構成系を構築した。まず、単量体のMamKとMamJ蛋白質を組換え大腸菌から精製した。また、蛍光顕微鏡観察のため、精製したMamKのCys残基を蛍光標識した。MamJはMamKと相互作用する蛋白質として知られているが、その具体的な分子機能は不明である。全反射蛍光顕微鏡を用いて、MamKのみで重合させた試料と、MamKに等モル量のMamJを加えて重合させた試料を観察したところ、MamJはMamK繊維が束化するのを防ぐことが示唆された。さらに、高速原子間力顕微鏡(高速AFM)を用いて解析したところ、MamJ存在下で形成されたMamK繊維は、MamJ非存在化に比べて長さが短いことがわかった。MamJはMamKの重合特性に影響を与える蛋白質であることが考えられ、現在その分子機構を解析している。 磁性細菌Magnetospirillum magneticum AMB-1のmamK欠損株では、マグネトソームは、直鎖状に繋ぎとめられず細胞内を拡散する。mamK欠損株にプラスミド上からMamK蛋白質を発現することで直鎖状配置が回復する。このmamK欠損株にアルファ、ガンマ、及びデルタプロテオバクテリアンに分類される別種の磁性細菌mamK遺伝子を発現させたところ、マグネトソームの直鎖状配置がレスキューされた。この結果は、MamKの機能が磁性細菌間で保存されていることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画において、本年度に予定した①マグネトソーム配置のin vitro再構成系の構築、②生細胞イメージングによるマグネトソーム配置機構解析の実験を実施した。全反射顕微鏡と高速AFMを用いて、MamJのMamK細胞骨格おける機能の一端を確認することに初めて成功した。また、生細胞イメージングによりMamK機能は異なる系統間の磁性細菌で保存されていることが確かめられた。当初の研究計画の目標を十分に達成しており、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、高速AFMを用いたMamK/MamJの再構成系の解析を行う。MamJ蛋白質が、MamK繊維の重合特性や構造へ与える影響を調べることで、MamJ蛋白質がMamK繊維に果たす機能を解析する。また、MamK/MamJ/マグネトソームの再構成系を高速AFMで観察する。これにより、再構成系内のMamK繊維、MamJ分子およびマグネトソームの動態と相互作用の直接観察を試みる。 昨年度の研究により、MamK機能は異なる系統間の磁性細菌で保存されていることが確かめられた。このことから、磁性細菌種間で保存されるMamKの特性がマグネトソームの配置機構に重要であると考えらえる。そこで、MamKの保存的特性について調べる。AMB-1のMamKは、細胞内で動的な繊維を形成することが知られている。そこで、FRAPアッセイを用いて複数の磁性細菌のMamKが動的な繊維を形成しているかを調べる。
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