研究課題/領域番号 |
19H02870
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
阪井 康能 京都大学, 農学研究科, 教授 (60202082)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | C1微生物 / メタノール誘導 / 脱抑制 / KaiC |
研究実績の概要 |
1.メタノールにより調節される細胞内制御機構 本研究では、従来の in vitroモデル系実験(グルコース培地からメタノール培地への培地シフトなど)を併用しながら、in natura(植物上)もしくはin naturaを模した環境適応実験を行い、メタノールの増減する環境に適応するC1微生物の生存戦略機構を解明することを目的としている。メタノール酵母のメタノール誘導性遺伝子の二段階活性化モデルにおいて、炭素源の無いときに起こる遺伝子発現(脱抑制)は、in naturaでは新たな炭素源探索のための遺伝子発現として捉えることができるため、R1年度は、グルコース枯渇条件でのメタノール誘導性遺伝子発現レベルを定量PCRやメタノールセンサー酵母によるFACS解析により精査し、速やかに脱抑制が起こる培養条件の最適化に成功した。また、炭素源変動や葉上環境でのRNP顆粒動態やオートファジーなどの細胞適応とその分子機構について、炭素源シフト時のRNP顆粒局在タンパク質の細胞内動態やペルオキシソーム動態の解析を進めた。 2. C1細菌の種特異的優先化機構と生存戦略機構 植物葉面への優先化度の異なるC1細菌(Methylobacterium属)を異なる蛍光タンパク質で標識し、アカシソ葉上での優先化プロセスやメタノール含有平板培地での増殖過程を蛍光顕微鏡やFACSを用いて追跡した。さらに、C1細菌において複数の環境因子からのinputを統合して様々な環境応答outputを制御しているキー分子であると想定している時計遺伝子KaiCタンパク質ホモログについて、高温から常温あるいは低温への培養温度シフト時のタンパク質量やリン酸化動態の解析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メタノールにより調節される細胞内制御機構については、グルコース枯渇による脱抑制条件の最適化に成功し、葉面における炭素源枯渇を模した実験条件の確立だけでなく、メタノール酵母のメタノール誘導制御機構の解明への基盤的知見が得られた。C1細菌の種特異的優先化機構と生存戦略機構についても、葉面や平板培地でのC1細菌の動態追跡や培養温度シフト時のKaiCタンパク質動態解析を当初の計画通りに進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
メタノールにより調節される細胞内制御機構については、脱抑制およびメタノール濃度に応答する誘導に関わる因子の同定とその生理機能の解析を行うとともに、メタノール濃度減少に伴うペキソファジーの制御機構など、これまで明らかにされてこなかったメタノール減少期における細胞適応とその分子機構を解析する。C1細菌の種特異的優先化機構と生存戦略機構については、異種間での比較に加え、野生株と各種遺伝子破壊株との比較を行う。KaiCタンパク質については、温度シフト適応時のリン酸化動態や複合体形成の生化学的解析を行うとともに、支配下遺伝子の発現制御を解析する。
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