研究課題
自然環境中に普遍的なガス分子であるCO2は、生物の代謝に様々に関与するとともに、地球大気と生物の共進化の歴史に決定的要因として関わる。本研究では、CO2がクオルモン(微生物がその細胞の密度に応じた挙動を示す際の信号分子)として微生物に及ぼしていると考えられる多面的な影響を調査することを通じて、普遍的な環境因子が微生物コミュニティーの形成の基盤をなす実態を明らかにすることを目的とした。これまで、RNAseq解析によって転写プロファイルを調べた複数の細菌について、高濃度CO2の導入により大幅な遺伝子発現の変動が認められること、一方で、菌株間で変動する遺伝子には共通性が認められないことが観察された。さらに、主要な変動遺伝子についてqRT-PCRによる再現確認を行ったが、多くの遺伝子について再現が認められない、ないしは変動幅が小さいことが観察された。これは、CO2が菌の代謝に伴って放出されるために正確な条件設定ができないことに帰因すると考えられた。上記とは独立に、新たなモデルとしてCaldinitratiruptor microaerophilusを用いた試験を行った。本菌は、本研究の出発点であるSymbiobacteriumに近縁の高温性細菌であり、グラム陽性のクロストリジアに含まれているが、微好気性を示す。本菌の培養に対するCO2の効果を検討したところ、Symbiobacterium同様にその添加が増殖に必須であることが判明した。さらに全ゲノムを解読し、カルボニックアンヒドラーゼ遺伝子を保有しないことも明らかにした。前年度から継続しておよそ500株の自然界分離株について、その主にコロニー性状に対するCO2の影響の有無を検定し、約30株について明確な差が生じていることを観察した。影響を受けた主な形質には、多糖と考えられる粘性物質の生産、色素生産、コロニー形状が認められた。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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