研究課題
(1)カイコ(Bombyx mori)のセリンラセマーゼ(SR)の遺伝子を同定するとともに、SRを発現・部分精製して酵素学的性質を検討した。カイコSR(BmSR)は、N末端に哺乳類SRと相同なPLP結合ドメイン、C末端に哺乳類SRにはない推定リガンド結合調節因子様ドメイン(ACT様ドメイン)を持つ。BmSRは哺乳類のSRの活性化に働く二価金属やMg-ATPに対して非感受性であといった点で、哺乳類のSRとは異なった。蛹の段階では、SR活性は主に脂肪体に検出され、このことはBmSR遺伝子の発現時期や局在性と一致した。(2)筋委縮性側索硬化症(ALS)の患者およびALSモデルマウスでは、病態の進行に伴って脊髄中のD-Set濃度が上昇することが知られている。昨年度、ポリエチレングリコール(PEG)修飾によって免疫原性を低下させたD-セリンデヒドラターゼ(Dsd1p)をALSモデルマウスに腹腔内投与したが生存期間の延長などの効果は確認されず、脊髄中D-Ser量の変化も見られなかった。本年度はPEG-Dsd1pの投与量を増大させることにより、健常マウスの脊髄中および血清中のD-Ser量を有意に低下させることに成功した。(3)Saccharomyces cerevisiae のヒストンアセチルトランスフェラーゼであるHPA2と81%の配列類似性を有する同菌D-アミノ酸N-アセチルトランスフェラーゼ(HPA3)は、各種D-アミノ酸にアセチルCoAからアセチル基を転移する。本研究ではHPA3のみがD-アミノ酸に作用する機構を解析し、D-アミノ酸に対する活性にはHPA3の活性中心グルタミン残基が決定的な役割を果たしていることを明らかにした。(4)この他、本年度はランソウのアラニンラセマーゼの酵素学や同酵素のD-Ala定量への応用、D-Asp生産性乳酸菌の開発などを行った。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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