研究課題/領域番号 |
19H02884
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
増田 誠司 京都大学, 生命科学研究科, 准教授 (20260614)
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研究分担者 |
井沢 真吾 京都工芸繊維大学, 応用生物学系, 准教授 (10273517)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | mRNA輸送体 / 構造解析 |
研究実績の概要 |
遺伝子発現の制御段階として、転写や翻訳がよく知られている。これらに加え、mRNAの核から細胞質への輸送(核外輸送)も高精細な遺伝子発現制御の一翼を担っていることを発見した。mRNAの核外輸送は、mRNA輸送体によって担われている。我々は、ヒトにおいてmRNA輸送体としてTREX複合体とAREX複合体の2種類を見いだし、それぞれの構成因子・選択的に輸送されるmRNA分子種・複合体の中心となるUAP56とURH49の構造を比較し、ヒトにおいて多様化したmRNA輸送体の生理機能の違いを明らかにしてきた。さらに最近、これらのmRNA輸送体は選択的mRNAスプライシングにも関与することを観察した。 本研究は、ヒトmRNA輸送体において未解明な4つの課題(新規AREX複合体構成因子・選択的mRNA認識機構・選択的スプライシング制御・C末端領域の生理機能の解決を、目指している。 本年度はこのうち特に新規AREX複合体構成因子の同定に成果を得た。TREX複合体は8種類の因子で構成されているのに対し、AREX複合体の構成因子として同定されているのは、URH49とCIP29の2因子だけである。このためAREX複合体には未同定の因子が存在すると考えられた。そこでURH49にFlagでタグをいれた融合タンパク質とHAでタグをいれたCIP29融合タンパク質を用いて、FlagとHAの2段階アフィニティー精製を行ったところ、良好な精製結果を得た。これを質量分析にて候補タンパク質を5種類同定した。加えて、新たな候補因子について遺伝子の発現ベクターへのクローン化、特異抗体の取得などを行い、これらを細胞で発現させて免疫沈降により相互作用を観察した。その結果、候補因子は全て新規AREX複合体の構成因子であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
未解明な4つの課題(新規AREX複合体構成因子・選択的mRNA認識機構・選択的スプライシング制御・C末端領域の生理機能)について、新規AREX複合体構成因子を完了した。また他の課題について今後の研究の推進方策に記載したように準備が順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
4つの主要な未解決の課題のうち最初の課題について解決した。そこで、残りの課題となっている選択的mRNA認識機構・選択的スプライシング制御・C末端領域の生理機能について解析を進める。 このうち選択的スプライシング制御についてインフォマティクス解析が終了している。選択的スプライシングを受けるmRNAの配列上の特徴(イントロンの長さ・GC含量・スプライシングインデックス等)について解析するとともに、標的mRNAの必要な部分を含むミニ遺伝子を構築して選択的スプライシング制御の分子機構に迫る。 選択的mRNA認識機構についてはPAR-CLIP解析の結果についての解析を進める。 C末端領域の生理機能については酵母で発現するUAP56やURH49、ヒト細胞で発現するSub2(UAP56ホモログ)を作成しているので、機能解析を実施してC末端領域の生理機能を明らかにする。
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